言葉を使うということは、本当に難しい。どれほど「やさしく」言い換えても、意図した通りに「伝わる」とは限らない。どうして伝わらないのか、どうしたら伝わるようになるのか。本書は、よくある言葉の表現方法や図解を用いた「伝えるための手法」よりも、伝わらない原因の解明に主眼を置き、それ原因を取り除けないまでも、伝わらない部分を補完する方法を教えてくれる。
筆者は、長年テクニカルライターをやっているが、書籍や記事は、それに多少なりとも興味を持っている人が読むので、「やさしく」解説することを目指すだけで、言いたいことは伝わっていたように思う。しかし、最近職場環境が変わり、説明の対象となるものには全く興味がないが、しかたなく読まなければならない、あるいは、できるだけ読みたくない人にも、伝えなければならなくなった。そうなって初めて、こちらがいくら工夫しても伝わらないことがあると知った。
そこで本書である。「そういうことか」と腹落ちすることが多いのだが、中でも「脳内経験」という、実際に経験できなくとも、脳内で経験していく手法には衝撃を受ける。想像力を働かせることではあるが、もう少し発展性のあるやり方で、これは、伝える仕事をしている人が、訓練としてやっていくべきことだ。伝わらないことにもどかしい思いをしている人にお勧めの1冊。
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