Cerevoは4月2日、ハードウェアのアジャイル生産を手がける新会社として「Shiftall」を設立し、その全株式をパナソニックに売却したと発表した。
Cerevoは、2007年にパナソニックを退職した岩佐琢磨氏が2008年に立ち上げたハードウェアスタートアップで、ライブ配信機器「LiveShell」シリーズや、「DOMINATOR」「1/8 タチコマ」といったアニメ・マンガ作品のファンアイテム、IoT家電の開発を手掛けている。
Shiftallは、Cerevoの持つ開発・製造ノウハウを活用し、ハードウェアを開発・製造・販売する新会社として設立。岩佐氏は、Cerevoの代表を退任し、Shiftallの代表に就任する。
今回の買収で、Shiftallはパナソニックが2017年4月に設置したビジネスイノベーション本部の傘下となる。同本部は、デジタル時代に対応した顧客価値提供プロセスの構築と、顧客への深い共感と学習サイクルに基づく新たな商品開発に取り組んでおり、Shiftallのものづくりノウハウをさまざまな戦略にもとづいて最大限に活用するという。
パナソニック広報部に買収の理由を聞いたところ、「さまざまな部分でアイデアを早く形にする動きが本社主導で進んでおり、アイデアを形にしてお客様に届けて、声を聴いてフィードバックを回すというサイクルを構築するには、そういった機能を社内にきちんと持つ必要があった。パナソニックとCerevoの量産には、生産規模やスピード感などで違いがあるものの、パナソニックが新たな形でものづくりのスピードを上げるため、Shiftallを内部化した」と説明する。
今回の買収で岩佐氏は古巣に舞い戻る形となる。Cerevoが新しいものづくりを実践している企業の一社であり、同社内にパナソニック出身者がいたこと、岩佐氏がパナソニックの内情がわかる人物だったことも買収の背景にあるようだ。
また、Cerevoを買収する選択肢はあったのかについてパナソニック広報部に聞いたところ「Cerevoは自社で製品も扱っており、製品サポートも提供している。Cerevoの事業戦略にもとづいた『やりたいこと』を尊重した」としている。
Cerevoの新たな代表取締役には青木和律氏が就任する。同氏は、大手重工業メーカーでHVAC(産業用冷凍設備および大規模空調システム)の開発に従事したのち2008年に独立し、ハードウェアの製造支援を手がける。2015年に「DMM.make AKIBA」へ入居し、農業IoTに取り組む傍らDMM.make AKIBAの受託開発もサポート。2016年には、ハードウェアプロダクトマネージャとしてシェアリングエコノミー企業のローンチに参画している。
同社では、今後も自社ブランドの生産、販売、サポートのほか、新規製品の企画・開発を手掛けていくとしているものの、ハードウェアの製造支援など“裏方”にも注力していくという。これまで同社が培ってきたIoT家電へのノウハウをハードウェアスタートアップ企業などに提供するほか、ハードウェアプロダクトの共同開発、製造および設計の業務比重を高め、パートナー企業とのビジネス価値を高めるとしている。
なお、ShiftallはCerevoの持つ開発・製造ノウハウを活用するとあり、開発リソースの分散が気になるところだが、これに関してパナソニック広報部は「あくまでも一部」だという。今後もCerevoが製品開発・サポートするリソースは確保しているようだが、CerevoとShiftallは別企業となるため開発リソースは共有しないとしている。
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