溝口氏によれば、実際に日本は先進諸国と比べてもICTツールの普及が遅れているという。ICTに対する投資を見ても、日本は近年横ばいだ。一方、米国はICTに対する投資は年々増え続けている。投資の中身を見ても、日本ではハードウェアのリプレイスであったり、既存システムの延命のためのパッチを当て続けるところに資金を使っているが、米国では最先端のクラウドツールを投入する流れになっているとのこと。そのため溝口氏は、日本もこの流れに付いていかなければならないと危機感をあらわにする。
「日本の職場環境満足度もG7諸国の中では最低だ。これはオフィスレイアウトや社食がないという要素もあるとは思うが、使っているPCが古い、または最新のツールが使えないという点も関わっている。日本は働き方改革という意味では完全に後進国だ」(溝口氏)。
しかし、溝口氏は日本がかつてワークスタイルで世界の最先端をいっていた時期もあると話す。「1970年代後半から80年代、オフィスレイアウトは島型オフィスだった。一方、米国は個室で働いていた。この時期は、米国の対日赤字が非常に大きく、日本企業のやり方を躍起になって探していた。その1つの要素がこの島型オフィスであると言われている」(溝口氏)。
「島型オフィスであれば、誰かが言葉を発すれば、隣に座っている人は会話を聞くことができるし、意見を聞きたい場合もすぐ聞くことができる。チームミーティングも同じ島でできてしまう。対して、電話しかなかった時代に米国のように個室にすると、チーム間でコミュニケーションするのも大変だ。つまり、当時の日本は米国の先を行っていた。現在米国は、米国式の島型オフィスを作っている。シリコンバレーの先端企業のオフィスを見てみると、米国式の島型オフィスの形式を取っている企業は多い。弊社のサンフランシスコにある本社も固定席で島型オフィスでやっている」(溝口氏)。
溝口氏によると、Slackは組織のアラインメントを取って、かつ業務効率を高めることができるツールだという。それに対し、メールによるコミュニケーションの問題点は2つあると指摘する。
「メールはメッセージが1つずつ独立している“点”である。会話をすればするほどメッセージが作られて溜まっていく。自分が返信すべきメールを探すだけでも時間が掛かる。もうひとつの問題点は、他人のメールボックスを見られないということ。複数のメンバーでプロジェクトを推進している場合、AさんとBさんが会話をし、CさんとDさんが会話をしていると、同じプロジェクトの話をしているのにコミュニケーション、会話が分裂してしまう」(溝口氏)。
一方で、Slackは“点”ではなく“面”によるコミュニケーションだという。「Slackは誰が何を発したのか、それに対する返信などがチャンネルという単位で区切られた箱に集約される。すべてのやりとりがチャンネル参加者に可視化されている。そして会話の履歴が全部残るので、後から参加した人も過去の会話をすべて見ることができる。メールだと過去の会話は誰かが転送しないと見られない」(溝口氏)。
また、業務効率化というメリットもあると溝口氏は話す。「Slackは会話をするだけでなく、経費精算や人事労務、ファイル共有など、全世界の主要な1600以上のアプリケーションがつながる。Slackだけ見ていれば、あらかたの業務は完成する。いちいちアプリケーションを探してクリックする手間がない。Slack自身もAPIを公開しているので、内製のツールをSlackにつなげることも可能だ」(溝口氏)。
同社がSlackを導入した効果を約1600社にアンケートしたところ、定量的な面では、メールの量が48.6%減、ミーティングの数が25.1%減、生産性が32.0%上がったとのこと。定性的な評価では、社内の風通しがよくなった、よりチームワークが強くなり士気が高まったとの回答があったという。
Slackが日本語に対応したのが2017年11月で、現在日本では50万人以上が毎日Slackを使っているそうだ。利用者はIT企業が多いが、日経、パナソニックなど伝統的な日本企業にも導入されているとのこと。画面に出ている半分以上の企業では全社でSlackを導入し、メールを完全に置き換えているという。
溝口氏は、「われわれが急成長を遂げているのは、アラインメントを重視してビジネスを展開しているからである。アラインメントを取るために大事なことはオープンかつフラットなコミュニケーションであり、それを実現するためにはSlackが最適である」と語り、「この分野では業界のリーダー的な立ち位置にいると認識している」と自社製品への自信を見せた。
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