サイボウズは、同社の代表取締役社長である青野慶久氏や経営陣が講師となり、サイボウズ流のチームワーク経営を指南する「チームワーク経営塾」の第1期生(2019年1〜3月)、第2期生(同年5〜7月)の募集を開始した。“変化の時代”において経営者自身がどう変わり、いかに環境変化に強いチームを作るかを参加型・対話型で学べるという。各期の募集社数は20社。受講料は全6日間で216万円となる。
なぜ、同社はこのタイミングで経営塾を始めるのか。この経営塾のテーマでもある「労働力不足」に対する思いもあわせて青野氏に聞いた。
——まず、「チームワーク経営塾」を始めることにしたきっかけを教えてください。
われわれは1997年に創業し、グループウェア「サイボウズOffice」シリーズなどを手がけていますが、10年目にあたる2007年に国内グループウェア市場でシェア1位を獲得したあたりで気づきました。風通しの良くなる企業と、変化しない企業に大きな差があることを。前者は社長のスケジュール公開や会議室の活用などオープンにグループウェアを活用していますが、後者は役員が情報を隠匿するため、重要な情報がないグループウェアは誰も使いません。さらに、掲示板で反対意見のコメントが炎上したからコメント自体を禁止にするなど、正しいとは言えない使い方をされていました。
やはりグループウェアというツールだけでは限界があり、結局は企業文化が変わらないと、風通しは良くなりません。ソフトウェアだけでは限界があると感じていたところ、弊社の経営理念である「チームワークあふれる社会をつくる」方向性や、働き方改革の文脈で講演を依頼される機会が増えてきました。あまりにも依頼が多く、有償化してもお声がけをいただく状況です。そこで、2017年11月にわれわれのメソッドを提供する新事業「チームワーク総研」を設立しました。
この活動を通じて、障壁となる企業文化を乗り越えるメソッドが有効であると感じ、本格的に提供しようというのがチームワーク経営塾の始まりです。ゼロ期は2018年10月19日から開始し、現在は2019年1月18日から開始する1期生の募集を始めました。受講料(税込み216万円:全6回の昼食代や懇親会費用を含む)は額面的に稟議が通りにくいケースもあるかと思いますが、本気で会社を変えたい方には覚悟を決めていただきたい。参加するまでのモチベーションを高めていただければ、あとはわれわれが引き上げます。
——チームワーク経営塾では何を得られるのでしょうか。
全6回の構成ですが、第1回は僕が目指すべき企業のベースラインを示します。それはトップダウンで社員が言うことを聞く企業文化ではなく、現場の自発性を引き出し、議論から進化につながるティール組織のようなもの。これをしっかりと伝えます。第2回は弊社の山田(サイボウズ 取締役副社長 兼 サイボウズUSA社長 山田理氏)が意思決定権限や組織の組み立て方を、第3回は林(同社 執行役員 経営戦略本部長 林忠正氏)が組織運営や擬似的な経営会議を行います。
このように講義とワークショップを組み合わせることで、理論を学びつつ、自社の課題解決につながる体験を身に付ける仕組みにしました。このほかにも、人事面やマーケティングと続き、最後は受講者の発表などを組み合わせて決意表明となります。受け身で話を聞くだけでは人は変わりません。また、腹落ちするまで取り組んでもらっても、それを会社に持ち帰って周りの人を説得する必要があります。社長が反対するため、せっかくの改善案が無駄になるケースも見てきました。
そのため経営塾ではチームでの変化を目指すため、2回目以降は各回1社につき経営者を含む2名まで同伴可能。つまり、3名まで受講可能にしています。仮に1人では分からなくとも、3人で議論すれば理解度はさらに深まるでしょう。われわれとしては、3名参加が前提で考えています。なお、受講後のフォローアップも現在思案中です。
——全6回のゴールで得られる企業像とはどのようなものですか。
第5回まで進めていく上で得たものを社内に伝えてもらえれば、得た知見の共有や隠れていた課題が見えてきます。日本企業の多くは労働力不足や若者の早期離職による定着率の低下といった課題を抱えているのは明らかでしょう。経営塾を受講すれば、「なぜ採用できないのか?」「定着率が低いのか?」が見えてきます。
われわれは(社員の)多様な一人ひとりの個性を重視し、どうすれば幸福度を高められるのか、そして生産性向上につなげられるのかに注力してきました。経営層がわれわれのビジョンを理解すれば、自社の課題に気づき改善につながります。
そこに必要なのは「トップの覚悟」です。トップが覚悟を決めなければ、周りも共感しません。そして、その共感者を増やしていくことが重要です。端的にまとめれば「理想を立てて共感を広げる」ことです。
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