仮想現実(VR)は残念なことに低迷状態が続いており、ごく少数の人々には愛されているものの、多くの人に広まっているとは言い難い。その一方で、拡張現実(AR)は少なくとも軌道に乗りつつある。バーチャルな画像を現実世界に重ねるARはほとんどの最新スマートフォンでサポートされているので、リビングルームにデジタルな家具を置いてみたり、自撮り写真にバーチャルな「ストームトルーパー」を重ねたりといったことが手軽に体験できる。
Porsche Cars North Americaは早い時期にARを採用した企業の1社であり、小さな「Mission E」をリビングルームに置いてみたりバーチャルな運転席を体験したりできるARアプリをリリースした。今回、同社は「Tech Live Look」と呼ばれるシステムを通して、そのアプリよりやや硬派な体験を販売店に提供しようとしている。
Tech Live Lookはメガネ型デバイスなのだが、初めて見たとき、筆者は最もよく知られているARヘッドセット「Google Glass」を装着して過ごした時間を思い出した。だが、このスマートグラスはGoogle Glassとはかなり異なる。Osterhout Design Group(ODG)が開発したPorscheのスマートグラスは、装着者の両目の前に1つずつ設置した2つの透明ディスプレイを利用する。これは、片目の端に1つの小型ディスプレイが搭載されていたGoogle Glassとは対照的だ。
Google Glassは主に通知デバイスとしての役割を果たしたのに対して、Tech Live Lookはそれよりもはるかに実用的なタスクを担う。具体的に言うと、Porscheのサービス技術者にクラウド上のデータへのハンズフリーアクセスを提供する。映画「ゴースト・イン・ザ・シェル」で草薙素子が電脳でネットに接続するのとは少し違うが、基本的な概念は同じである。
まず、これによって、技術者がハンズフリーで技術文書を検索して閲覧することが可能になる。筆者が昨年、SUBARUの新しいヘッドユニット用のハーネスをハンダ付けしていたときに、Tech Live Lookがあれば重宝していただろう。スマートグラスを通して文書は空中に浮かんでいるように見える。現時点では小さなトラックパッドを使って文書を検索する必要があるが、今後のアップデートで音声認識とジェスチャーコマンドにも対応する予定だ。
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