logo

ネットとリアルの両面から変える--「不動産業界のアマゾンを目指す」GA technologiesの挑戦

加納恵 (編集部)2018年07月25日 15時30分
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 GA technologiesは、ネットとリアルの両面から不動産業界の仕組みを変えているテックカンパニーだ。設立は2013年。元Jリーガー(アマチュアサッカー選手)という異色の経歴を持つ代表取締役社長の樋口龍氏が立ち上げた。

 「目指したのは不動産テック企業ではなくてテックカンパニー」とし、AI戦略室の発足や、ベトナムにおけるオフショア開発拠点の設置など、テクノロジーに惜しみなく投資を続ける。紙、FAX、電話とアナログのツールが多く介在する不動産業界で、GA technologiesが何に注力し、変え続けているのかを、代表取締役社長の樋口龍氏に聞いた。

GA technologies 代表取締役社長の樋口龍氏
GA technologies 代表取締役社長の樋口龍氏

1年半がかりで立ち上げたエンジニア部門

――GA technologiesを設立したきっかけを教えてください。

 不動産業界はポータルサイトの登場によって、家探しの部分が大きく変わりました。それにより集客効率は良くなりましたが、その先のテクノロジ化が進んでいないのが現状です。不動産は住宅というリアルが介在する商売です。契約書を作ったり、アフターサービスが必要になったり、集客以降のオペレーションをデジタル化することを目的にはじめました。

 不動産の売買、仲介といったリアルの市場は約43兆円(「平成28年度年次別法人企業統計調査」より不動産業の売上高(財務省)より)ある巨大市場で、不動産ポータルサイト市場に比べて圧倒的に大きい。私たちはこのリアルな市場でマネタイズしています。この動きはグローバルでも潮流になっていて、海外の不動産テック企業の「Compass」や「REDFIN」に似ています。いずれもエンジニアとエージェント(営業担当者)を自社で抱えていて、GA technologiesも同様です。

――エンジニアの採用は、現在かなり難しくないですか。

 難しいですね。実際、エンジニア部門の立ち上げには1年半もかかっています。原因は明らかで、私自身がエンジニアのことを知らなかったからです。プログラミングがわからないため、お恥ずかしい話ですが、フロントエンジニアにアプリ制作をお願いしたり、サーバのエンジニアにウェブサイトを作ってほしいと頼んだりしていました。それはエンジニアの人は嫌気がさしますよね(笑)。そうした基本的なことすらわからずやっていたので、責任者が3回入れ替わっています。

 これはまずいと思い、私自身がプログラミング教室に通いました。そこで最低限の知識を身に付け、加えてグリーの初期メンバーだった方に、私自身のITスキルアップの顧問に迎えました。IT化のイロハを教えてもらい、ようやく形が整ってきました。今は195名にいる社員のうち、約70人がエンジニアで、割合としては4割弱になっています。

――ご自身がプログラミングまで学ばれるのはすごいですね。

 不動産テック企業ですと言いながらもエンジニアは外部、という形にはしたくなかったんです。教室に通ったからといって、私がプログラムを組むことはありませんが、エンジニアの人たちに近づくことは大切です。

 小さい話ですが、服装もスーツにネクタイといった営業マンのスタイルからラフなものに変えましたし、社内のエージェントも基本的にスーツは着ていません。そうした部分から変えないといけないと思っています。

――服装の変化によって、エージェントとエンジニアの関係も変わりますか。不動産テック企業を見ていると、エージェントとエンジニアは、下手すると敵同士のような関係になってしまいますが。

 服装を変えたからだけではないと思いますが(笑)、現在、エージェントとエンジニアは隣同士で働いています。これは、エンジニア側から出た希望で、当初はフロアを分けようと思っていたのですが「エージェントの近くがいい」と。理由を聞くと、近くにいたほうが仕事がやりやすいからなんですね。

 実際、お客様先にはエージェントとエンジニアが一緒にヒアリングに伺っています。ユーザーヒアリングにエンジニアを同行するのはすごく重要で、これによって、お客様が求めるプロダクトへの理解が深まる。宅建(宅地建物取引主任者)の資格を持っているエンジニアもいて、これはエンジニアが現場に出ているからこその動きだと思っています。お客様と話すことで、宅建を持っていたほうがいいなと感じるケースが多いため、これから資格を取ろうとしているエンジニアも多いですよ。

――不動産をわかるエンジニアが少ないと言われますが、営業との距離を近づけることで理解が深まるのですね。逆に営業側への変革というのは。

 エージェントには、データをきちんと残すことを徹底して言い続けてきました。不動産業務は、FAX、電話などアナログのツールが多いため、データに残すという認識が当初は全くありませんでした。しかしリアルにデータに残しておかないと効率の良い業務ができないと言い続けることで、意識を変えました。

 こうした取り組みの1つが仕入れの効率化につながっています。実は、不動産の仕入れは、経験2年くらいの人間が担当しています。仕入れは、経験と勘がものをいう世界ですから、ベテランの方が多い。GA technologiesでは、データベースを構築することで、経験の浅い担当者でも、効率よく仕入れられるようにしました。

 このバックボーンになっているのが、不動産業務支援ツール「Tech Series」の1つである「Tech Supplier」です。物件情報は「マイソク」(※図面と呼ばれる不動産物件のチラシ)で提供されるのですが、毎日数百枚届きます。従来は仕入れ担当者が目で見て、良いか悪いか判断していました。いいと思う物件は「半年前に早く売れた」など、経験と勘から導きだされ、いいと思わない物件は捨てていました。

 それでは物件の質が担保できず、だめだと思ったんです。そこでマイソクを画像認識で読み込めるシステムを作り、物件のデータベース化に成功しました。マイソクはフォーマットがバラバラで、画像と文字が混在していますから、読み取りは困難なのですが、現在87%程度の精度で読み込めるまでになりました。

 読み取り後は、AIを使ってスクリーニングし、ソフトウェアロボットによる自動処理RPA(Robotic Process Automation)を使った書類作成や業務効率化を実現しています。

マイソク読み取り画面。ラインがついたところが読み取られている
マイソク読み取り画面。ラインがついたところが読み取られている

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]