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アニメ制作のデジタル推進と作画報酬新制度で“働き方改革”--スタジオ雲雀に聞く - (page 2)

佐藤和也 (編集部)2018年07月13日 12時00分
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光延氏:それ以前から何度かトライしてきましたが、描き手側の反発は大きかったですし、今でもあるにはあります。紙のほうが早く描けるとか、絵が描きたくてアニメーターになったのに、デジタル作画では絵じゃないと言われるような、こだわりの部分で抵抗感がある方も少なくないです。ただ、ツールやデバイスの進化で機が熟したことと、効率を考えるとやむを得ずにいつかは変わるものだから、という意識が、移行の後押しになっていると思います。

宮崎氏:加えて、フリーのアニメーターが機材をそろえることの負担が大きく、経済事情で踏み切れないという意見もありました。ですが、やはりこだわりのほうが多いという認識です。このあたりは、いずれはデジタルネイティブ世代が現れてきますので、デジタルで描くことの障壁は下がっていくと予想しています。

――紙に描くことと、タブレットなどに描くときの感触が違うというのは容易に想像できます。それが戸惑いの要因でしょうか。

宮崎氏:そうですね。みなさん試行錯誤されていますし、自分のタッチを出しやすくするように、ペン先などを工夫しています。ただ、昔にくらべると今はだいぶいい感触を出しやすいようになっています。

――デジタル移行を進めるべく、講習会も開いていたそうですが。

光延氏:一時期は数週間に1回ぐらいのペースでやってました。でも振り返ると、最初はまったく参加者が来ませんでした。実は10年も前からデジタル作画の取り組みを考え始めていて、メーカーにお願いをして機器を置いてもらって、ゆくゆくはそのような時代になると説明したのですけど、社内の描き手は誰も触らず、むしろ違うセクションのスタッフのほうが試していたぐらいです。

 実際に触ってみてわかるメリットもあって、楽になったり紙よりも早く描けると感じた方もなかにはいました。もちろんメリットとデメリットがあり、慣れに時間がかかる方もいます。

――今では3DCGを活用したアニメも数多く見受けられ、フル3DCG作品もあります。こうした3DCGの活用も効率化につながっているのでしょうか。

宮崎氏:率直に言えば、効率化につながると思います。3DCGの利点はライブラリ化ですね。あとは、例えば学校の教室など、作品中に何度も出てくるようなシーンを2Dの絵で描くと個人差が出てしまうところがありますので、そこは3Dモデル化したほうが、カメラの視点を変えるだけでいろんなシーンに活用できますし、レイアウトに個人差が出ず、狂いもなくなるという利点もあります。

光延氏:両方に利点があると思います。当然ですが、3DCGは1枚描くよりも多くの時間とコストがかかります。3DCGで100倍のコストがかかっても、作画でそれ以上のコストがかかるとわかっているなら、3DCG化したほうがいいという話です。フル3DCGだから楽になるというわけではありません。臨機応変に作画と3DCGをうまく使い分けていくことが、効率化につながるものと考えています。

光延青児氏
光延青児氏

アニメだけが、予算と作業量との対価にマッチしていない現状

――今回の原画における報酬を枚数ベースではなく、難易度や成果をベースに設定する取り組みの経緯を教えてください。

光延氏:3DCG会社を経営していることもありますから、そこでは工数を出して見積もりなどをとっています。それであれば、アニメの現場でもできるのではないかと。そう思って宮崎と取り組み始めました。

――そもそも、これまでなぜ原画制作費は枚数ベースのままだったのでしょうか。

光延氏:私が業界に入って30年ぐらいになりますが、そのときから当たり前のようにそうなっていました。なので、具体的な経緯はお答えできないですが、おそらく50年以上前から変わっていないと思います。長き慣習として根付いていたところもありますし、結局のところ、枚数ベースのほうがわかりやすいので変えられなかったと思います。

――この取り組みは難易度と工数、そして成果物の評価に客観的な視点と公平さが求められるかと考えます。

光延氏:実際にやってみて、奥が深いと思いました。ご指摘の通りに、難易度や評価のジャッジに対して透明性を高めないと通用しないものになります。最初は制作陣を中心にたたき台となるものを考えていたんですが、作画スタッフの納得が得られなかったんです。それならばと、工数や難易度が一番わかる社内の作画スタッフに決めてもらいました。

宮崎氏:納得度をあげるために、作画スタッフが描き手の視点で、実際の作業では何が大変なのかを洗い出して整理してもらい、そのうえで難易度などを設定してもらいました。

――3DCGと作画では、工数や難易度も変わってくるようにも思いますが、違いはありましたか。

光延氏:項目自体は割と似ていて、思っていたほど違いはなかったです。工数付けでCGと作画との手間の差異は確かにあります。わかりやすいたとえですけど、画面上で登場する人数が増えれば、CGで動かしても手間は増えますし、作画でも同様です。モデルで動かすのでは手間が削減できるといったこともありますが、ほぼ項目としては同じになっていますね。

――実際にこの取り組みを提示したとき、外注された側の反応はいかがでしたか。

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