Slack Japanは6月26日、東京都内において、メディアやパートナー向けのカンファレスを開催。ビジネスチャットツール「Slack」における日本市場の動向や展望を発表した。
Slackは、米Slack Technologiesが展開するビジネスチャットツールとして、2014年にローンチ。もともとは前身となる会社で、ゲーム開発の際に活用された社内コミュニケーションツールをベースにしているという。世界100カ国以上で800万人以上の日間アクティブユーザー数、500万以上の組織が活用している。2017年11月には日本語版を公開した。
日本市場におけるSlackについては、50万人以上の日間アクティブユーザー数となっており、これはSlack全体でも世界第2位の規模を誇ると説明。ちなみに都道府県別では、東京都だけで30万人以上のユーザーが存在しているという。また、15万人以上が有料プランのユーザーとしている。
登壇したSlack Technologies創業者の1人で、最高経営責任者(CEO)を務めるStewart Butterfield氏は、日本で受け入れられている理由について、職人芸のような気質や世界のさまざまな技術を柔軟に取り入れる文化があることを背景に、Slackが持つ「常に改善、そして完璧さを求め、さらにチームワークを重視する」という価値観があっているからという見解を示した。
Slack Japanのカントリーマネージャを務める佐々木聖治氏は、日本での普及について「国内外の企業が口コミによって広まり、本社の幹部メンバーが驚くほどのもの」とコメント。また、“働き方改革”が叫ばれているなかで労働生産性が海外と比較して低い状態にあることを触れつつ、デジタルネイティブ世代においては、SNSやメッセンジャーツールがコミュニケーションツールとして定着しており、そのような世代を受け入れ、コミュニケーションを促す環境の変化が求められる時期に来ていると語る。
現状ではメールをはじめ、メッセージやクラウドツールなどさまざまなサービスが提供されており、適切な情報の共有や流通が行われず、ビジネスのスピードが損なわれ、想定外のトラブルが発生する危険性があることも示唆。Slackにおいては、「チャンネル」「共有」「検索」の3つに特徴があり、課題解決に役立つと説明。特にチャンネルは、目的ごとに分かれたひとつの空間で、誰が何を発言したのか、それがわかるというオープンなコミュニケーションの場とし「2025年までに、多くのメールと置き換えるものになると信じている」と自信を見せた。
佐々木氏は国内市場に向けた今後の施策として、まずSlack Japanのメンバーを2018年内に30人以上へと増員しサポート体制を強化する。また、国内パートナー企業の支援により、100を超える国内サービスとSlackとの連携を進める。そして、Slackにおける成功事例を共有できるコミュニティを形成し、Slack Japanでも支援していくという。
カンファレンスでは導入企業の担当者によるトークセッションも実施。ディー・エヌ・エー(DeNA)経営企画本部 IT戦略部 部長の成田敏博氏は、同社において2014年の段階から現場での活用が始まり、2017年10月から全社導入したと説明。成田氏は全社導入について、ツール選定によるものではなく、もともと任意でツールの使用を許可しているなか、気がついたら2017年の段階で9割がSlackを使っている状況になったことから決めたという。ちなみにプロ野球球団の横浜DeNAベイスターズでも活用されており、アレックス・ラミレス監督もアカウントを持っていると語った。
DeNAのSlack活用として、コミュニケーションの促進以外にも、社内からの問い合わせに対応するチャットボットをIT系の部門に導入。今後人事や総務といった部門でも活用する計画があるという。このほか財務会計システムと連携し、Slack上で申請と承認が行えるようになり、効率化が図れていると説明。また、トイレの空き状況もわかるチャットボットを導入。これも役立っていると語った。
メルカリ 執行役員VP of People&Culture 兼 社長室長の唐澤俊輔氏は、さまざまなツールを試したところ、Slackの使い勝手の良さによって活用が広がっていったと説明。企業が成長するに従って、経営と現場の距離感が遠くなってしまうという組織としての課題もあり、その解決にも役立っているという。
特に同社では「オープンなコミュニケーション」を重要視していることから、その点でも役立っているという。チャンネル上での対話に役員が入ってくることも珍しくなく、なかには自分の好きなことをつぶやくだけのチャンネルもあり、創業者でありCEOを務める山田進太郎氏もそのような使い方をしていると説明する。
運用のなかでは、チャンネルが増えると情報が多すぎてしまう一方で、退出には後ろめたさを感じてしまいやすいことから、「リーブデー」という退出を推奨する日を定期的に設け、この課題を解消しているという。今後はできるだけ情報などをSlackに集約していくとともに、社外とのコミュニケーションもメールではなく、Slackで完結できるようになれば理想的だとした。
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