VTuber発展のカギは“歌”、VR音楽ライブの時代は来る--クラスター加藤CEOが描く未来

 「バーチャルYouTuberのような、インフルエンス力のあるバーチャルタレントの発展は“歌”がカギ。cluster.は、仮想空間でライブイベントができる会場を目指す」ーーそう語るのは、VR空間でイベントスペースを提供するサービス「cluster.」を展開する、クラスターのCEOを務める加藤直人氏。そんな加藤氏に、バーチャルタレントの展望や事業の今後について聞いた。

クラスター CEOの加藤直人氏
クラスター CEOの加藤直人氏

 cluster.は、VR空間内で手軽にバーチャルルームを作ることができるサービス。他のユーザーを招いてイベントやミーティングなどが可能。VRデバイスを使えば、家などにいながら会場に行ったように感じられるものとなっている。アルファ版のリリースを経て、2017年5月から正式サービスを開始した。

cluster.イメージ。初期段階は1種類のアバターに限定していた
cluster.イメージ。初期段階は1種類のアバターに限定していた

 cluster.のキャッチコピーは「ひきこもりを加速する」。そして加藤氏は、京都大学の大学院へ進んだ直後に中退し、家から出るのが面倒という理由で「1年で会って話した人(ユニークユーザー)は10人くらいだった」というほどのひきこもり生活していた。その生活は約3年間におよび、独学で習得したプログラミングで受託開発の仕事をこなしていたという。買い物も外出せずともECサイトで購入できるため、苦ではなかったと振り返る。

 そんな加藤氏が、ただひとつ満たされないものとして挙げたのが「水樹奈々さんのライブ」。アニメが好きで、声優や歌手として活躍する水樹奈々さんのファン。そして高校時代に行ったライブの熱気、そして感動が忘れられなかったと語る。ただ、当時はライブに行きたい気持ちよりも、玄関から出ることが面倒と感じていた。

 「円盤(※ライブDVDやBlu-ray)を買って映像を見ても満たされず、負けのような気はしたので、行きたい気持ちはあった。それでも当時は、会場に行く移動時間が無駄に感じてしまった」。

cluster.が目指す“バーチャルな空間で人が集まる体験”

 cluster.のサービスは、VRデバイスの普及により加藤氏自身がやりたかったことーー家にいながらもバーチャルな空間で人が集まる体験、そして“ハレの体験”が味わえるイベントスペースを考えて作ったという。もっともアルファ版から正式サービスの初期段階では、ミーティングやカンファレンスの用途で使われることが多く、バーチャルYouTuberも今のような盛り上がりを見せていなかった。

 「cluster.はあくまで活動の場を提供するプラットフォーム。会社としてもコンテンツはやらないスタンスではあるが、一定数のコンテンツがそろわないと成立しない。ただ、ゆくゆくは現実の見た目に左右されず、インフルエンス力のあるバーチャルタレントが登場し、そのタレントに会いたいと思ってくれたり、その場として活用してくれる未来は来ると思っていた。でもそれは、2018年ではないと考えていた」

 加藤氏は2017年後半に、スマホ上にアバターを表示させ、配信するアプリの開発を進めていたことを明かす。いわゆる“音声ライバー”と呼ばれる、音声だけで架空のキャラクターになりきる配信者に着目。cluster.の体験を一端でも味わってもらいたいと、1枚絵ではなく身体となるアバターを持って配信できたらと考えた。自分でアバターを組むことができ、スマホで顔をトラッキングしながらアバターを動かし、3人まで同時に喋れるコラボ機能もある……というものだった。ストア申請まで済ませるほど開発は進んでいたが、体験として満足のいくレベルに達しなかったこと、加藤氏自身がやりたいことからズレてきていたことを理由に凍結したという。

 加藤氏は、3Dモデルのキャラクターを自ら作り、動かすことに大きな敷居があると感じていたが、2018年に入ってから、個人でもそのようなユーザーが格段に増え、それとともにバーチャルYouTuberの盛り上がりも加速。その状況にcluster.を対応し、アバターを自由にカスタマイズできたり、自作の3Dモデルを活用できるアップロードを可能にした。

ユーザーが自由に3Dアバターをアップロードできる機能を一般公開した
ユーザーが自由に3Dアバターをアップロードできる機能を一般公開

 これにより、バーチャルYouTuberがcluster.に登場し、インタラクティブ性の高いイベントが開催できるようになったほか、イベントに参加する一般ユーザーも好きなアバターで参加できるようになった。

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