過去にバーチャルタレントとcluster.上でお話できるイベントを開催。時期としては早かったが、バーチャルタレントと会える場として認知される第一歩になったという。そしてバーチャルYouTuberとして人気の高い月ノ美兎を迎え、4月に開催する予定だったが、ネットワークトラブルによって5月に延期するハプニングがあった。
加藤氏はその要因として、インフラ部分でユーザーが瞬間的に想定外の数が殺到したことに加え、負荷テストではわからなかった不具合が発生したと振り返る。原因自体はすぐに判明し、延期日程も告知することができたが、トラブルが発生したときのアナウンスも至らない部分があったとして「ファンのみなさんには申し訳なかった」と語る。
この時までcluster.を活用していたユーザーは、VRデバイスをすでに持っているような“ギークな層”が中心ではあったが、月ノ美兎のイベントにあわせてユーザー層が一段階広がった。一方で一般のユーザーが使ってもらうことを想定したQ&Aやカスタマーサポート、トラブル時のアナウンスも含めて整備できていなかったところがあったとし、目線を変える明確なユースケースができたと振り返る。
その後、延期した月ノ美兎をはじめ、ときのそらや富士葵といったバーチャルYouTuberとのイベントを開催。家からでも、イベント会場のように多くの人が集まっているなかで、会いたい人に会えるという環境が一歩進んだとしている。
インフルエンス力のあるバーチャルなタレントーー今のバーチャルYouTuberについて加藤氏は、アニメルックかつ女性のキャラクターが主流となっており日本のカルチャーにあっているとしたうえで、現状では男性ファンが比率として多く、この先は女性ファンが入ってくることが、より広がりを生み出せると分析。男性のバーチャルYouTuberも、今後インフルエンス力のある存在が出てくる可能性は高く、さらに1人だけではなくグループとして支持を受ける可能性も示唆。そうなると雰囲気がより変わってくるとした。
そしてさらなる広がりを考えるなかで“歌”がカギになるという見方を示した。今のバーチャルYouTuberは、トーク内容に支持を得ている要素が大きいものの、言語の壁を越えにくい。また東南アジア圏は日本のアニメキャラクターの理解が一定数あるものの、欧米での理解は一部にとどまっており、3Dアバターとしてもリアルタイプが好まれていることから、そこにも壁があると指摘する。
「日本で広く受け入れられるようなマスの存在になり、さらに海外の壁を超えるのが歌。歌は言語の壁や国境を超える。その例が初音ミク。世界へ広がったことについてはいろんな要素があると思うが、一番大きいのは歌がベースにあることと捉えている」
キャラクターが現実のライブステージを行うことも珍しくない状況になっており、透過スクリーンを活用した初音ミクの生バンドライブはもとより、ニコニコ超会議などでは「スプラトゥーン」のキャラクターによる「シオカライブ」や「ハイカライブ」が大観衆を集めたほか、最新の映像技術でリアルタイム公演を行う「AR performer」といった取り組み、またDMM VR THEATERといった常設の3Dホログラフィック専用の常設劇場もあり、受け入れられる土壌はあるとしている。
加藤氏は、音楽は差別化もしやすく、ゆくゆくは歌でタレント性を持つキャラクターも登場する可能性は高いとし、さらに二次創作として“歌ってみた”“踊ってみた”などもしやすく、そういったものが膨れ上がってくると、次のフェーズに入ると語る。すでに富士葵はメジャーデビューを発表しており、ほかにも準備が進めてられている話も聞いているとし、2018年の後半から2019年には、このフェーズに入るとの見解を示した。
こういう状況になったときに、パフォーマンスを観客と一緒になって盛り上がっていくという体験作りが重要であり、その会場としてcluster.が選ばれる状況にすることが目標でもあるとした。あくまで目的を持った部屋や会場、イベントスペースの提供であり、いわゆる“だべる”ようなスペースや、滞在時間の長さなどは目的にはせず、そこでの体験を充実したものにして、ユーザーに対してはお金を払ってもそのスペースで体験して盛り上げたいと思ってもらうこと、インフルエンス力を持つバーチャルなキャラクターの商業活動ができる場の確立をすることが大事と語る。
クラスターでは正式サービス時に、エイベックスと資本業務提携も結んでいる。加藤氏は、まだ詳しいことは話せないとしながらも、こういった仮想空間でのライブイベントについてはかなり話をしており、前のめりで案件を進めているものもあるとした。また、有料チケットやバーチャルアイテムの有料販売も準備を進めており、商業活動ができる環境を整えつつあるという。
VRデバイスも長時間装着しにくいところがあり、現状では短時間で楽しめるコンテンツが主流となっているが、「Oculus Go」の登場により装着に対する敷居や価格で一段階下に降りたという。ここからさらに女性でも気軽に装着でき、価格も抑えたVRデバイスと環境が整えば、長時間体験型のコンテンツが出てくるとし、さらに仮想空間で音楽ライブを行う状況も加速するという。
「ずっと思い描いていた、仮想空間でバーチャルなアーティストが音楽ライブを行う未来は来る。そしてもう現実味を帯びていると感じている。できるだけ自分が気持ちいいサービスにしたい。リアルでは体験も貴重だが、不便さが多い。また、イベントも盛り上がりたい人だけではなくて、隅っこにいて盛り上がっている様子を眺めつつ、控えめにコンサートライトを振りたいという人もいるはず。そこで味わえる体験を提供したい。そして、バーチャルなタレントが歌などのパフォーマンスを行う状況になったとき、イベントスペースとしていかにノウハウがたまっているかの勝負になる。そのときにクラスターが安心や安定感を持っている会社として、体制を整えつつ準備を進めていきたい」。
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