「学校にある課題を攻略せよ」--LITALICOが小学生のアイデアをもとにハッカソン

 社会における課題をテクノロジの力で解決したい。そのために、人の輪をつなげていきたいーー。そんな思いで開催されるコンテストがある。障がい者支援や教育事業を展開しているLITALICOが開催する「SOCIAL FIGHTER AWARD(ソーシャルファイターアワード)」は、テクノロジの力で社会課題に挑む人を「SOCIAL FIGHTER」と定義し、優れたプロダクトに賞を与えるコンテストだ。現在「学校にある課題を攻略せよ」をテーマに作品を募集中で、プレイベントとして2つの企画を開催した。

「SOCIAL FIGHTER AWARD」
「SOCIAL FIGHTER AWARD」

 プレイベントの第1弾は5月19日に開かれた「学校を攻略せよ!アイデアソン for kids」で、小学生たちによって「汚いトイレは使いたくない」「学校にあんまり行きたくない」といった課題を解決する、さまざまなアイデアが発表された。そして、第2弾の「ゲストは“ぼくなつ”綾部さん!ハンズオンあり【EdTech ハッカソン】」では、第1弾のアイデアソンで出たアイデアや、持ち込みのアイデアをもとにハッカソンを実施した。ここでは、ハッカソンの様子をお届けする。

「ぼくなつ」の綾部氏の講義からハッカソンスタート

 ハッカソンは、6月16日にジャパンシステムズを会場に実施された。勉強のために参加した新人のエンジニアや、他業種だが教育に興味があり参加したエンジニア、子どもの課題を解決したい父親など、大人12名、子ども2名が参加した。

 イベントの冒頭では、2000年に第1作が発売されたPlayStation用ゲームソフト『ぼくのなつやすみ』シリーズで監督・脚本・ゲームデザインを務めた綾部和氏が「企画の作り方・広げ方」と題して講義をした。

「ぼくのなつやすみ」の監督である綾部和さんによる講義
「ぼくのなつやすみ」の監督である綾部和さんによる講義

 その後、参加者により「暗記パンのように効率よく暗記できないか」「通学を楽しくするには」といった課題とアイデアが発表された。アイデアに賛同した人たちはグループを作り、個人で進めたい人は個人のままアイデアの実現に向けた検討に移った。また、綾部氏やLITALICO執行役員CTOの岸田崇志氏が、参加者のテーブルをまわってアドバイスをしていた。

参加者がアイデアを発表した
参加者がアイデアを発表した
「実現のヒントになれば」と参加者が持ち込んだガジェット類
「実現のヒントになれば」と参加者が持ち込んだガジェット類
実現に向けて具体的な方法を検討していく
実現に向けて具体的な方法を検討していく

物事の仕組みを知ることでアイデアが生まれる

 イベントの途中で、綾部和氏に話を聞いた。「ぼくのなつやすみ」のアイデアは、仕事で疲れていたとき、なぜか夏休みに親戚の家の近くで遊んでいた野山のことを思い出したことがきっかけで生まれたという。

 「ふと夏休みとゲームをくっつければいいんじゃないかと思いついて、隣の席に座っていた同僚に“夏休みをゲームにしたら買うか”と問いかけたら、“買う”と言われた。ただ、当時はリアルな野山や田舎の風景をCGで描く技術がなかった。そこで背景はすでに『となりのトトロ』などで成功していたアニメーションの背景技法を用いて、人物はCGにして動き回るようにした。当時、PlayStationで人気のゲームはCGの尖った、オシャレなビジュアルばかりだったので、和風な田舎のイメージだけでは弱いと考え、キャラクターデザインは都会的なPlayStationのイメージに合うようにした」(綾部氏)。

 綾部氏は普段から物事の仕組みや構造を考えることが好きなのだという。仕組みを知って、合わせることで企画となっていくとのこと。綾部氏は現在「火星カレー」というカレー屋のプロデューサー兼オーナーでもある。

 「カレーを作るときも同じで、なぜ美味しいと思うのか、うまみ成分はどんな種類があるのか、舌はうまみをどう感知しているのかということを理解してから、“ではカレールーはどうやって作ろう”と考えれば迷いがないし、バリエーションを考えるときも簡単になる。物事の仕組みを理解することが企画を出す上で大切なこと」(綾部氏)。

 綾部氏は「このイベントは自分が普段付き合っている人たちよりも平均年齢が20〜30歳くらい下の参加者が多い。自分自身にも良い刺激になっている。社会貢献が目的なので、若い人が参加するのはとても良いことだと考えている」と語った。

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