LINEは、5月14日に名刺管理アプリ「myBridge」をリリースした。スマートフォンのカメラで名刺を撮影するだけで、文字認識技術(OCR)とオペレーターの手入力によってデータ化してくれるサービスだ。登録した名刺情報を「LINE」のトークなどで共有することもできる。
また、ユーザー同士がmyBridgeに名刺を登録していれば、スマートフォンに連絡先を登録していない相手でも、着信時に相手の名刺情報が表示される。さらに、登録した名刺情報を、スマートフォンやGoogleの連絡帳に保存できるほか、Excelファイルでのダウンロードも可能だ。1日あたりに登録できる枚数や項目の上限はなく、すべての機能が無料で利用できるという。
「Sansan」や「Wantedly People」をはじめ先行サービスも多く、すでに名刺管理アプリ市場はレッドオーシャン化しているが、LINEはなぜこのタイミングで参入を決めたのか。同社取締役 CSMO(最高戦略・マーケティング責任者)の舛田淳氏に、その狙いや勝算を聞いた。
――名刺管理アプリ市場では後発となりますが、なぜいまmyBridgeを公開したのでしょう。また、公開から間もなく1カ月が経ちますが、ユーザーの反応はいかがでしょうか。
リリース直後もたくさんの方から同様のご質問をいただきました(笑)。弊社が2017年6月に発表した事業戦略の1つに「Connected」があります。これは、LINEのコミュニケーションツールとしての利便性向上と同時に、人々の生活をより豊かに楽しくするための新機能の実装コンセプトですが、われわれは今までプライベートネットワークに注力してきました。ただ、LINEグループとして見た時に「まだやれる部分はあるよね」と。その観点から生まれたのが、(ビジネス版のLINEである)「LINE WORKS」やmyBridgeでした。
人と人がつながる方法は多様です。たとえば、ビジネスSNSやビジネスチャットなどもありますが、そのなかで「日本らしく」「アジアらしく」という観点で見ると名刺交換という行為はビジネスネットワークそのものでしょう。しかし、便利かつ簡単に(名刺を)意味のあるものとして保存するという点では課題が残ります。
確かに先行する競合他社も多数ありますが、利用されている方は多く見積もっても数百万人。アクティブユーザーはイノベーターやアーリーアダプターと呼ばれる限られた方々でしょう。加えて、既存の名刺管理アプリを利用される方は男性が大半です。
われわれは、すばらしいテクノロジでソリューションやアプリを生み出しても、一般層に広がらない例を数多く目にしてきました。だからこそ、ハードルを下げて多くの一般ユーザーに使っていただくことを主目的としてきましたが、名刺管理ソリューションという市場においては、まだハードルを下げられると判断したということです。
実は、myBridgeのリリースのアナウンスについては、声を小さめにしてきました。myBridgeはシンプルさに比重を置いているため、どのように受け取られるのか反応を伺いましたが、ネガティブな声はほぼありません。利用者からは評価とともに機能のリクエストをいただき、現在も改良に取り組んでいます。(入力情報の)速さや正確性、入力情報の範囲、中国語などの多言語対応がサプライズになったと思います。
――サービス名に「LINE」を入れなかった理由は。
myBridgeではLINEサービスとは異なるネットワーク構築を目指しており、サービスポジションやブランドポジションという観点で見ると、LINEの冠が功を奏しないと判断しました。ミスリードを起こさないという判断も含んでいます。
ローンチ後にSNSの反応を見ていると、LINE連携機能で「LINEとつながるのでは?」と誤解されたメッセージを目にしました。myBridgeにおいてLINEはあくまでも補助的なツールであり、(取り込んだ名刺データを)LINEで共有することは可能ですが、あくまでも独立したアプリです。
――競合他社と比較した際のLINEならではの強みはどこだと考えますか。
名刺管理アプリを利用されている方の中には、「名刺管理だけしたい、それ以外のSNS機能などはわずらわしい」と感じている方もいるのではないでしょうか。われわれも"つながり"の提供など名刺管理以外の付加要素は過剰だと考えており、シンプルかつ低コストであることを重要視しています。世の中を見渡すと、名刺を管理していない方もいます。しかし、ビジネスの観点から見れば名刺の重要性は改めて述べるまでもありません。有効活用していただきたいという思いから、myBridgeはシンプル・無料・無制限というコンセプトを実現しています。
また、カバレッジ(適用範囲)という点では、日本国内で仕事をするにしても、グローバル化の波に逆らうことはできません。そのため中国語や韓国語を用いた名刺にも対応しました。また、入力フォームに関しても会社名や名前、部署、メールアドレスだけではなく、そのほかの情報も入力できた方が便利です。たとえば、住所をタップすればGoogleマップを呼び出せるなど、単に管理するのではなく、カードを開いたら次のアクションにつながる仕組みも用意しました。これらが競争力になると思います。
――2017年後半にLINE PlusとNaverは、韓国の名刺管理アプリ「Remember」を買収しました。myBridgeにはRememberの機能なども活用されているのでしょうか。
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