「Amazon Key」を自宅で利用できるよう設定してから何週間か経ったにもかかわらず、筆者が実際に自宅内への配送を頼んだことは、まだ一度もなかった。次のことが気になっていたからだ。
Amazon Keyは、「Amazon Prime」会員向けに米国の一部の都市で提供されている宅内配送サービスだ。「Amazon Key Home Kit」を購入すると、スマートロックと、サービスを利用するためのセキュリティカメラである「Amazon Cloud Cam」が届く。それを設置すれば、Amazonと契約した配達業者が、不在時に玄関の鍵を開けて荷物を家の中まで運び入れてくれる仕組みだ。配達の予定はAmazon Keyアプリで通知され、配達時の様子もスマートフォンからリアルタイムで直接モニターできる。Amazonは毎回その様子を動画クリップとして記録し、保存しており、ユーザーが確認できるようになっている。
Cloud Camでモニターできるとはいえ、知らない人が自宅の玄関の鍵を開けるというのは、何となく不安だった。このサービスの発表以来、同じような懸念を表明している人はほかにもいる。Amazonに自宅の中にまでアクセスを許可する(配達業者に対しても、Cloud Camに対しても)ことに関する全般的なプライバシーの問題が指摘されている。
「Terms and Conditions for Amazon Key」(Amazon Key利用条件)に関する専用ページも設けられており、プライバシーに関する告知、利用規約などについて各種のリンクがある。
筆者が特にためらいを感じたのは、Cloud Camのサービス規約である。サポートページから、一部を引用する。
c. Cloud Cam記録データについて。Cloud Camは、動きを感知するとCloud Cam記録データをクラウドにストリーミングします。Amazonは、製品・サービスの提供と改善を目的として、お客様のCloud Cam記録データをクラウドで処理し、保持します。そのために必要になるCloud Cam記録データの使用に関するあらゆる権限を、お客様はAmazonに許可するものとします。この権限には、例えばCloud Cam記録データをコピーする権利、Cloud Cam記録データを加工して動画クリップを作成する権利、お客様のCloud Cam記録データに関する情報を利用し、お客様に代わってそれらを整理する権利、技術サポートのためにCloud Cam記録データをレビューする権利などが含まれます。動画クリップの削除方法など、Cloud Camについての詳細は、こちらをご覧ください。
宅内配送サービスを始めた企業は、Amazonが最初ではない。スマートロックのメーカーであるAugust(現在は、「Yale」の親会社でもあるAssa Abloyの傘下)が2017年9月、Walmartと提携し、宅内配送サービス「August Access」のパイロットプログラムを導入している。2018年に入ると、Augustは配送会社Delivと組み、Macy's、Best Buy、Bloomingdale's、PetSmartといった小売企業とも提携して、このAugust Accessを正式に発表した。
宅内配送サービスが普及し、ましてAmazonのような大手が参入するようになると、プライバシーに関する懸念と利便性とのバランスがますます重要になる。玄関先に置かれた荷物を盗まれるのと、Amazonの宅内配送を利用するのとでは、どちらが心配か。最終的にはユーザー次第だ。
2016年度の米連邦捜査局(FBI)犯罪統計によると、警察に届け出のあった窃盗犯罪のうち、解決されたのは18%にすぎないという。つまり、荷物を盗まれたら、取り戻せる可能性はかなり低いということだ。ただし、Amazonの「A-to-Z Guarantee」と「Amazon Key Happiness Guarantee」では、商品の配送に問題があった場合にクレームの申請が可能で、玄関先での盗難も対象になっている。
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