出発当日まで目的地がどこか知らされない「ミステリーツアー」。希望日程や参加人数、旅行のテーマなどを選ぶだけで、面倒な手配をすべて任せられるサービスは国内外に数多くあり、自分がどこに向かうのか分からないドキドキ感や新しい発見を求めて利用する人は多い。
そんな中、ベルギー・アントワープに拠点を置くスタートアップが立ち上げたミステリーツアーサービス「Slow Cabins」が、一風変わっていると海外で話題になっている。「Slow」という名前から想像するに、何かリラックスできそうな旅が提案されそうだが、一体どのようなサービスなのだろうか。
Slow Cabinsは、一言で表すと「ITデトックスツアー」だ。目的地はベルギー国内の大自然のどこか。テントのいらないキャンプともいえる。このミステリーツアーでは、同サービスオリジナルの可動式キャビンに宿泊する。キャビンはベルギー国内のどこかに設置され、ユーザーは旅行出発日の2週間前に目的地を知らされるという。
ITデトックスツアーということで、キャビンにはWi-Fiもなければテレビもない。大自然に囲まれながら、自宅や都会では味わえないゆっくりとした時間の経過を楽しむスローツーリズムが、同サービスの提供価値だ。
最低宿泊日数は2泊。夏にはキャビンのすぐ外で景色を眺めながらバーベキューやキャンプファイヤーを楽しんだり、寒い冬にはキャビン内の薪ストーブを焚いたりしてリラックスした時間を過ごせるという。また、アクティブに過ごしたい人向けには、イベントや観光地などのローカル情報も提供しているほか、レンタルバイクやスパトリートメントの手配なども予約時にリクエストできる。
キャビンは2名用のカップルタイプと5名までのファミリータイプを用意。大自然が満喫できるよう大きくデザインされた窓が特徴の木製小型キャビンには、リビングにダイニング、キッチン、ベッドルーム、バスルームと最低限の設備が揃う。
キャビンの設計・デザインはエコフレンドリーがテーマ。たとえば、屋根には自家発電用ソーラーパネルが設置され、雨を飲み水にするフィルターも完備。キャビン内に設置されたディスプレイで使用した電力や水の量が一目で分かるようになっている。宿泊地周辺の自然へのインパクトを最小限にとどめるための配慮だという。
キャビンの大きさはカップルタイプで34平方メートル、ファミリータイプで39平方メートルと決して大きくはないが、シンプルな作りかつデザインも洗練されており、宿泊するのが待ち遠しくなるだろう。
1泊の料金はカップルタイプが175ユーロ(約2万3000円)から、ファミリータイプが185ユーロ(約2万4000円)から。地元の食材を使ったスローフードが楽しめるという朝食と夕食もオプションで追加可能だ。
また、宿泊での利用以外にも、企業のミーティングやチームビルディングなどに利用できる「Time for Focus」パッケージも用意している。3名から利用できるこのパッケージは、コーヒーや紅茶などの飲み物が無料で提供されるほか、オプションで昼食や軽食もリクエストできる。可動式というキャビンの特性を生かし、自然の中という条件は残しつつ、オフィスに近い場所に設置することもできるという。
Slow Cabinsは2017年7月に、Xavier Leclair氏によって創業された。同氏は、「現代の人びとが求めているものはSpotifyではなく“Slowify”(「ゆっくり、遅い」を意味するSlowをもじった造語)。自然や時間、互いに向き合う機会がもっとも大切なものになりつつある」と考え、Slow Cabinsを着想したという。
もともと、環境と社会のつながりや、資源の利用手段の改善だけでなく廃棄物やコスト削減を同時に目指すサーキュラー・ビジネス・モデル(CBM)に興味を持っていた同氏は、キャビンをガスや電気、水道などの公共サービスに頼らない、エコフレンドリーなものになるよう注力した。
Slow Cabinsのキャビンは現在、ベルギー国内のみに設置されているが、今後は欧州全土に展開する予定だという。目的地となり得る国が多くなれば、ミステリーツアーの楽しみもさらに増すこと間違いないだろう。
普段、PCにスマートフォンにタブレットとIT漬けになっている人は、次の欧州旅行の際に、現地の大自然を満喫できるITデトックスツアーを組み込んでみてはいかがだろうか。
(編集協力:Livit岡徳之)
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