Bob Anstettさん(52才)は、ただソーダを買いたかっただけだ。
Anstettさんは3月末、出張でフロリダ州セントオーガスティンに滞在していた。ある朝、近くのDunkin’ Donutsに行ってみようと思い立った。列で待っているとき、レジに「現金またはチップ非搭載カードのみ」と書かれた表示があることに気づいた。
そのため、買おうとしていたボトルを冷蔵庫に戻し、自分の支払い方法を受け付けてくれる近くのガソリンスタンドまで歩いた。
Anstettさんはフロリダ州フォートローダーデールに住み、3年ほど前から現金を使っていない。非常用の20ドル紙幣を財布に入れて持ち歩くことさえしていない。
それは、Anstettさんと夫人が自分たちの財政状態をより正確に把握しておきたいと考えたからだ。個人向け資産管理サービスの「Mint」を使うことで、Anstettさんは、2017年に夫婦で1414件の取引(食品や食事に関連する609件の取引を含む)を行ったことを把握している。
どんなに少額の取引でも、クレジットカードやデビットカードで決済する。
「(会計士に)笑われるよ。『食料品店に行って、使ったのは1.5ドルだけか』と言われるだろうが、私は『ああ、ソーダを買いたかったんだ』と答える」(Anstettさん)
Anstettさんは、特に米国においては時代の少し先を行っているのかもしれない。しかし、そうした状況はおそらく長く続かないはずだ。
カードやモバイル決済、Eコマースによって現金はやがて消滅する、という考えは十年以上前から話題に上っている。しかし、私たちに現金離れさせることを目指す新しいガジェットやアプリ、サービスがこれだけたくさん登場しても、世界の小売り取引の約85%はいまだに現金で行われている。2017年にU.S. Bankの調査に参加した米国人のうち、現金を全く使わないと答えた人はわずか5%だった。Anstettさんのような人々は、ごく少数派である。
われわれはまだ現金の世界で暮らしているが、比較的若い世代がデジタルマネーに移行するにつれて、そうした状況は変わるかもしれない。U.S. Bankによると、米国のミレニアル世代の49%がモバイル決済を試したことがあるのに対し、ベビーブーマー世代ではその割合はわずか32%だったという。より多くの人々がようやくキャッシュレスに移行する中で、スマートフォン時代の「すぐに得られる喜び」の魅力がその転換点になるかもしれない。
世界銀行によると、単純なフィーチャーフォンからでも購入や決済、送金ができるデジタルマネーは、発展途上国に大きな影響を及ぼし、より多くの預貯金や起業家精神を促す可能性があるという。CapgeminiとBNP Paribasが2017年に発表した報告書によると、こうした全ての理由から、非現金取引は1年間で約11%増加しており、電子決済やモバイル決済がそれに貢献しているという。
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