とはいえ、現金を決済手段の首位の座から引きずり下ろすのが難しい理由は、たくさんある。現金は扱いが簡単で、長年の実績がある上、スマートフォンのようにバッテリがなくなることもない。そして、自然災害で停電が発生した場合に利用できる唯一の通貨も、現金だ。
PayPalの最高執行責任者(COO)で、フィンテックスタートアップ5社の創業を支援した経験を持つBill Ready氏は、「この20年間、人々は現金の死を予測してきたが、それは大げさな予測だったと思う。大まかに言えば、現金はかなりゆっくりと死を迎える可能性が高い」と語った。
特に若者の間でキャッシュフリーのライフスタイルが拡大していることを示す1つの手がかりとなるのが、一部の音楽フェスティバルがキャッシュレスに移行している、という現象だ。
例えば、毎年夏に開催され、その期間中にはテネシー州マンチェスターの人口を約6万5000人増加させる「Bonnaroo Music and Arts Festival」について考えてみよう。これまでに会場の泥の中に失われた財布の数は計り知れないだろう。
同フェスティバルは2017年、約10年前から既に使用していたRFIDリストバンドに、カード情報をひも付ける試みを行った。
同フェスティバルを運営するAC Entertainmentの戦略的パートナーシップ担当バイスプレジデントのJeff Cuellar氏は、フェスティバル来場者が既にキャッシュレス決済を気に入っていることを考えると、より多くの人がこのアイデアを受け入れてくれると思う、と話す。
「高校生のファンたちは、この決済方法に特に違和感を感じていない。こうした人々が、ほかの人々をキャッシュレスに向けて前進させるのを助けてくれている」(Cuellar氏)
貨幣を鋳造したり印刷したりするには、多額のコストがかかる。スウェーデンやノルウェー、ナイジェリアといった国々が、流通する現金の排除に積極的に取り組んでいる理由の1つには、そのことがある。こうした変化を支持する人々は、詐欺の軽減、予算管理の簡略化、そして世界のどんな場所のものも迅速に購入できることなどの利点をうたっている。
一部の企業は、人々に電子決済を利用させることに成功しているようだ。中国の巨大テクノロジ企業であるAlibabaとTencentは、人々にモバイル決済を使うよう促すことに成功し、年間に何兆ドルもの取引が行われている。
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