「ジュニアローバー(JR)」は満面の笑みを浮かべて部屋の中をうろうろしている。JRの台に載せた「Alexa」搭載BluetoothスピーカからPharrell Williamsのヒット曲「Happy」が流れ、それをJRによる英国人女性の声がさえぎってAlexaにマーガリンを買い物リストに追加するよう頼む。
Bluetoothスピーカに搭載されたAlexaは「はい。買い物リストにマーガリンを追加しました」と答える。JRはその結果を記録する。続いて、米国男性の声でハートフォードの現地時間が尋ねられたが、この質問をAlexaは聞き間違えた。JRはそれも記録する。
JRは、Alexa搭載デバイスの品質検査を自動化するために設計された特製ロボットの略称だ。JRは、あらかじめ設定されたコースに従って私の目の前で止まり、テスト中のAlexa搭載スピーカを設置した台の高さをスチール製のピストンでゆっくりと上げ、向きを少し変えた。そして、またおとなしくテストルームの巡回を始めた。
Amazonのシニアマネジャー(ふざけて「シニアローバー」と呼ぶ同僚もいる)、Ryan Fallini氏は「テストには7時間かかる。一発で合格する製品は少ない」と語る。
ここはAmazonのLab126。サンフランシスコから車で南東に約1時間のカリフォルニア州サニーベールにある。通りを挟んだ向かいには米航空宇宙局(NASA)の試験施設があるこのラボで、Amazonは「ムーンショット」のテストを行っている。Alexa搭載の「Echo」シリーズだけでなく、増え続けるAmazon以外のサードパーティー製Alexa搭載デバイスのテストだ。
最近はAlexa搭載デバイスがあまりにも増え、Lab126のスタッフはテスト作業をこなすためのロボットの必要性を感じていた。同社にとってはうれしい悲鳴で、Alexaを広めようというAmazonの取り組みが計画通りに進んでいることの兆候とも言える。
「Alexa Voice Service」(AVS)担当バイスプレジデント、Pete Thompson氏は「われわれの唯一絶対のミッションは、開発者に集中することだ。それが、『Alexa everywhere』(Alexaはどこにでも)というAmazonのビジョンの実現につながる」と語った。
かなり高い目標だが、Amazonはこれを達成しようとしており、着実に開発者に働きかけることがこの戦略にとって重要だと考えている。
Amazonの最高経営責任者(CEO)、Jeff Bezos氏は2月の業績発表後の電話会見で、「われわれは、他社や開発者によるAlexa導入が加速する重要な段階を迎えた」と語った。AVSのミッションは、そうした外部によるAlexa導入を円滑にし、可能な限り訴求していくことだ。
IHS Markitの市場アナリスト、Blake Kozak氏は「スマートスピーカ以外の製品で外部と協力することは、市場シェア確保のために重要になる」と語った。同氏はまた、Amazonのこの市場での優位性は意外と高くはないと指摘する。Kozak氏によると、Alexaと連携するかAlexaの機能を搭載する製品の2017年の販売台数は約2500万台だという。Googleアシスタントは2000万台で、既に市場にある多様な「Android」搭載製品が、GoogleがAmazonに追いつく可能性を示すという。
Kozak氏は、モノのインターネット(IoT)が加速し続ければ、最終的には特定のAIアシスタントを搭載するデバイスが、他のプラットフォームより優位に立つための「排他権」のように機能するとも語った。
Amazonのパートナーシップ推進を担う1人が、Echo製品エンジニアリングディレクターのChris Hagler氏だ。同氏はオリジナルのEchoを開発したチームのメンバーだったが、現在はLab126で各社がEchoのような独自製品を開発するために必要なツールを外部開発者に提供している。
同氏は「私のチームが設計、構築し、テストするものはすべて、AVSコミュニティも利用できる」と語り、Alexaを動かすための多数のハードウェアとソフトウェアの進歩をホワイトボードに列記した。「私は市場向け製品を開発しながら、AVS向け新技術も開発している」と語る。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス