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ニュージーランドから学ぶ“個性を伸ばす”教育--テクノロジは「あくまでもツール」 - (page 3)

藤井涼 (編集部)2018年05月07日 12時30分
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 実は、このカウリ・ラーナーズの経営者は日本人。世界100カ国以上の大学が入学資格として認めている「国際バカロレア(IB機構)」初等教育プログラムの日本第1号に認定された、岐阜県のサニーサイドインターナショナルスクールを経営している渡辺寿之氏が、2015年12月にニュージーランドに設立した乳幼児教育施設だ。スタッフもすべて現地で採用しており、生徒もニュージーランドの子どもが中心だという。


カウリ・ラーナーズ経営者の渡辺寿之氏と、同園のマネージャーであるマキシーン・マクロビー氏

 同国で乳幼児教育施設を立ち上げたきっかけは、当時小学生だった息子の不登校だったと渡辺氏は振り返る。他の進路を模索する中で、息子がニュージーランドでの短期留学に興味を持ち、試しに共に行ってみたところ、渡辺氏自身も同国の教育に魅力を感じるようになり、現地に乳幼児教育施設を設立することを決めたという。「もともとニュージーランドの生徒主体の教育や、考えさせる教育、失敗から学ぶ教育には興味があった。人の才能はマルチで、運動が得意な子もいればアートが好きな子もいる。時代が変わるなかで、我が子も含めて日本の一斉的な教育にはフィットしていないと思った」(渡辺氏)。


生徒たちの成長を記録する「Storypark(ストーリーパーク)」

 教育そのものにとり入れているわけではないが、テクノロジも活用している。カウリ・ラーナーズを含むニュージーランドの多くの乳幼児教育施設では、子どもたちの成長記録を「Storypark(ストーリーパーク)」というサービスに残している。それぞれの担任の先生が子どもたちの日々の過ごし方を写真にコメントをつけて記録。そのページに両親や祖父母がいつでもアクセスできるようになっている。料金は生徒1人あたり月額9.90NZD(1NDZ=約77円)ほどだという。

自然の中で身につける“忍耐力”

 森の中にある乳幼児教育施設リバーリー・アーリー・ラーニング・センターも訪れた。同園では、“子どもを自然に帰す”ことをコンセプトにしており、座学よりも、大自然の中で遊び、体を動かして経験を積むことを大切にしているという。ただし、テクノロジを一切使わないわけではなく、自然の中でiPadの教材を使ったりすることもあるそうだ。


森の中にあるリバーリー・アーリー・ラーニング・センター

子どもたちは自然の中で泥だらけになって遊ぶ

 同園のディレクターであるカースティ・ミレン氏は、自然の中で育った子どもは2つのスキルを身につけると話す。1つ目は「忍耐力」。たとえば、雨が降ってもすぐに部屋に入るのではなく、レインコートを着て泥だらけになって遊ぶ経験をすることで、その後の人生でもさまざまな環境に適用できるようになると考えている。そして、2つ目は「リスクテイカー」になれること。日本では先生が最初から問題の答えを教えてしまったり、保護者からのクレームを恐れて怪我や失敗をさせない園も少なくないが、ミレン氏は自然の中で想像力を膨らませて遊んだり物作りをしながら、時には失敗したり怪我をしたりすることで、より子どもの豊かな成長を促せるのではないかと語った。


屋内で遊びたい子どもたちのための部屋もある

 この2つの乳幼児教育施設には、サニーサイドインターナショナルスクールのスタッフである2人の女性が親子留学で訪れていた。2週間の短期間で子どもを現地の乳幼児教育施設に預け、自身も英語学校などに通うというものだ。参加者である母親は、「小学校受験に向けて、子どもが小さなうちから夜遅くまで塾に通わせる詰め込み型の教育には違和感があった。小さい時だからこそ、人間性やその後の軸となるものが必要。勉強よりもまずはコミュニケーション力などを養ってほしかった」と、親子留学に参加した理由を話す。


リバーリー・アーリー・ラーニング・センターのディレクターであるカースティ・ミレン氏と、親子留学に参加していた親子

親子留学では子どもを現地の乳幼児教育施設に預け、母親は英語学校などに通う

 また、2週間ほどの参加を通じた気づきとして、「短期間でも5歳の娘の成長は著しい。最初は服が汚れることも嫌がっていたけれど、いまでは平気で汚れることを楽しんでいるし、以前より自立するようになった。また、(リバーリー・アーリー・ラーニング・センターは)大人と同じものを生徒にも使わせる。マグカップもプラスチックではなく割れる陶器のマグカップ。小さいうちから本物を使う経験をすることで生きる力につながっていくと思う」と我が子の成長を喜んでいた。

 今回の取材では、幼稚園から高校までの幅広い教育機関を回ったが、いずれの学校においても共通していたのが、一人ひとりの生徒を尊重し、たとえ幼稚園児であっても子ども扱いしないことだ。個性を伸ばす教育であるテファリキの精神が、教科や日々の授業・試験内容などにも表れており、これが同国の高い教育水準にもつながっているのだろう。もちろん、日本とは国の成り立ちや人口の規模、また人種の数も異なるが、グローバル化が避けられない現代において、同国の教育から学ぶことは少なくないだろう。

取材協力:ニュージーランド大使館 エデュケーション・ニュージーランド(ENZ)、ニュージーランド航空

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