評判が良く、広く使われているホテル向けの電子ロックシステムの設計上の不具合を突いたマスターキーを作ることに、セキュリティ研究者らが成功した。これを使うと、建物内のすべての部屋に自由に入ることができるという。
問題の電子ロックシステムは、スウェーデンのロックメーカーAssa Abloyが開発した、「Vision by VingCard」というもので、166カ国の4万2000件を超える施設で使われている。何百万室にもおよぶホテルの部屋のほか、ガレージや倉庫も、このシステムを戸締まりに用いている。
こうした電子ロックシステムはホテルでは一般的だ。こうしたシステムを使えば、従業員の設定により、自らの客室など、宿泊客がホテル内で入室できる範囲を細かく制御したり、さらにはエレベーターが停止するフロアを制限したりすることが可能になる。カードキーは、宿泊客がチェックアウトしたら、データを消去して再利用できる。
今回の指摘で、そのカードキーが、これまで考えられていたほどセキュアではないことが判明したというわけだ。
マスターキーを作ったのはF-SecureのTomi Tuominen氏とTimo Hirvonen氏で、「ほぼ何もないところから」作成できたと話している。
研究者らによると、カードキーならどれでも使える。古くなって期限が切れたものでも、廃棄されたものでも、マスターキーの作成に使えるデータが十分に残留しているという。研究者らは小型の端末を使って、カードキーからデータを盗むことができる。この方法は、無線RFIDを使うカードキーと磁気ストライプを使用するカードキーの両方で有効だ。その後、その端末で盗んだキーデータを操作して、事実上その建物内の全ての部屋を解錠できるマスターキーを作成できるという。
研究者らは「現在のところ、われわれ以外の誰かがこの特定の攻撃を実際に行っているとは認識していない」と述べ、ホテル利用者へのリスクは大きくないことを示唆した。
さらに、研究者らの発見を受けて、Assa Abloyはこれらの脆弱性を修正するセキュリティパッチをリリースした。
Assa Abloyの顧客には、ベルリンのWaldorf AstoriaやサンフランシスコのGrand Hyatt、トロントのRenaissance Downtownなど、複数の大手ホテルが含まれるとされる。
米ZDNetはHyattとMarriottの広報担当者と連絡を取ろうとしたが、本稿掲載時までに返答はなかった。
Hiltonはこれらの脆弱性を「認識」していると、同社の広報担当者は述べた。
「最も重要なのは、宿泊客の安全とセキュリティだ。当社は影響を受けた一部ホテルのシステムを修正するため、Vingと密接に連携している」(同担当者)
影響を受ける施設にはアップデートが提供されており、研究者らはできるだけ早くこれを適用するよう促している。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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