荷造りに長い時間をかけ、空港では重たいスーツケースと一緒に移動、ホテルに着く頃にはクタクタにーー。こんな出張や旅行のたびに発生するストレスを軽減してくれるのがクラウドクローゼットサービス「DUFL(ダフル)」だ。洋服や靴などを事前に預けておくことで、旅先や出張先のホテルに指定した荷物を届けてくれる。
今回、来日中だった米DUFLの共同創業者である4人に、サービスの品質へのこだわりや、今後のビジョンを聞く機会を得た。同社のCEOのBill Rinehart氏、マーケティングを担当するCMOのAndrea Graziani氏、技術領域を担当するCTOのAJ McGowan氏、そして北米以外のグローバル地域の責任者である塚本信二氏の4人だ。
唯一の日本人である塚本氏は、ダフルインターナショナル及びダフルジャパンの代表取締役社長でもある。塚本氏は2015年に渡米後、現在は日本に拠点を戻し、国際展開の指揮をとっている。
DUFLのユーザーは、自身の衣類や靴、スポーツ用品などを、あらかじめDUFLのクラウドクローゼット(倉庫)に宅配便で送って預けておく。そして、出張や旅行の際は、DUFLアプリで全ての手配を済ませる。クローゼットから「シャツ2枚」「靴下3枚」など必要なものを選び、滞在先のホテルなどを受け取り場所に指定すると、宿泊当日までにDUFLスーツケースに入った荷物がホテルに届く。
あとは最低限の手荷物だけで渡航し、滞在中はDUFLから送られた衣類を着用。帰る時に使用後の衣類をDUFLスーツケースに詰めて、ホテルのフロントなどに預けることでDUFLが回収してくれる。回収された衣類はキレイに洗濯・クリーニングされ、次回の依頼までクラウドクローゼットに保管される。料金はDUFLクローゼット使用料が月に9.95ドル、クリーニング代と往復送料を含む1回の利用料が99ドルだ。
「DUFLは一般的なECと異なり、クラウドクローゼットから出荷したものが必ず戻ってくる。中にはユーザーが一部を持って帰ることもあるので、寛容さを持つプラットフォームにすることに苦労した」とMcGowan氏は話す。
DUFLは、米国で2015年5月から提供されている。広告などのプロモーションは展開してこなかったそうだが、これまでにも多くの顧客に利用されており、その業種はコンサルタントから銀行、IT、ホッケーチームまで幅広いという。また、ユーザーのサービス継続率が99%と非常に高いことも特徴だ。
「顧客ロイヤルティの指標であるNPS(ネットプロモータースコア)は80%と高く、サービスを一度使って辞めた人はほとんどいない。出張のために時間をかけて荷造りをして、帰ってきたら大量の洗濯物に悩まされる。DUFLであれば、旅行のたびに発生するこうした無駄な時間を1度につき3~6時間削減でき、ストレスを圧倒的に軽減できる」(Bill氏)。
4人へのインタビューを通して感じたのが、同社の品質へのこだわりだ。ユーザーがホテルに着いてDUFLのバッグを開いた時、いつでもキレイに畳まれた衣類や生活用品が無駄なく収納されているよう、倉庫の作業スタッフへの教育を徹底しているという。
また、McGowan氏によれば、倉庫の管理システムもすべて自社開発しているそうだ。「倉庫のスタッフがパッキングの際にミスをしないためのツールを、いかに各レイアに対して用意するかが大切だと思っている」(同氏)。同社の倉庫には、数十万点ものアイテムが保管されているが、これまで1つも紛失したことはないという。
サービス公開から2年が経ったDUFLだが、いまだに競合と呼べるサービスは生まれていないとBill氏は話す。荷物の配送や洗濯など、それぞれの機能を切り出したサービスは作ることができても、DUFLと同等の品質で、一気通貫型のサービスを構築するのは容易ではないためだと説明する。
DUFLは、2017年7月に日本にも上陸した。ただし、すぐにクラウドクローゼットを始めるのではなく、「まずは日本の有力な事業者と手を組み、より日本人のニーズにマッチした領域から参入することにした」(塚本氏)。第1弾が、ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)とともに開始した、事前に預けたゴルフバッグを指定したゴルフ場に配送するサービス「DUFL Golf with GDO」だ。
DUFL Golf with GDOは、ゴルフ用具一式を専用倉庫(ロッカー)で管理し、専用アプリで指定された場所、時間に届けるサービス。自宅に届いたウェルカムキットのカバーにゴルフバッグとゴルフシューズを収納し返送すると、専用ロッカーでゴルフ用具一式が保管される。あとは専用アプリでゴルフ場とプレー日を入力するだけで、指定場所・時間に預けたゴルフ用具一式が配送されるようになる。
専用アプリでは、配送場所の指定だけでなく、DUFLストアにアクセスでき、ゴルフ用品(ティーやボールなど)の購入も可能。購入したゴルフ用品は、自身のロッカーに直接届けられ、不足したゴルフアイテムを発送前に補充できる。今後は、DUFLストアだけでなく各種通販サイトから自身のロッカーへの直送も可能にする予定だという。
塚本氏は同サービスについて、「非常に反響があり、ユーザー数も着々と伸びている」と手応えを語る。現状は、倉庫からゴルフコースにバッグを送るサービスだが、顧客からはゴルフコース間のデリバリーもしてほしいという要望があり、こちらにも対応する予定。さらに、今後は日本でスノーボードなどのウインタースポーツ向けのサービスを展開するほか、主力事業であるクラウドクローゼットサービスも2018初旬には開始する予定だという。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」