パラリンピックなどを見ると、何らかの身体障がいを持っていてもテクノロジの力で体の不自由を補えば活躍の場を広げられる、と実感する。音楽の世界でも、目が見えなかったり片腕が使えなかったりする人がピアノで素晴らしい演奏を披露するなど、人間の可能性に限界はないと思う。
今回は、右腕のないドラマーに専用の演奏用義手を提供するプロジェクト「The Cyborg Drummer」を紹介しよう。現在クラウドファンディングサービス「Kickstarter」で支援募集中。
Jason Barnes氏は、プロのドラマーを目指していたのだが、事故に遭遇。命を救うため右腕を切断するという決断が下された。命は助かったものの、ドラマーの命である右腕を失ってしまったBarnes氏。しかし、夢を諦めなかった。退院後すぐに、残された腕の先にドラム用スティックをテープで固定して練習を再開。
これにジョージア工科大学が協力し、Barnes氏にドラム演奏用の義手を開発した。義手といっても腕にスティックを固定する単純なものでなく、取り付けた2本のスティックをモーターで細かく制御できる高度な身体支援デバイスだ。生身の人間には不可能な速度で叩くことなどが可能なため、開発チームは装着したBarnes氏をサイボーグドラマーと呼んでいる。
ただし、開発した試作品は研究目的で製作したデバイスであり、Barnes氏が自由に使うことや、演奏旅行に持って行くことが制度上できないそうだ。さらに、使うには2台のコンピュータと技術面をサポートする操作チームが必要なので、実用的でない。
そこで、Barnes氏専用の義手を開発しようと、クラウドファンディングで支援キャンペーンを始めた。キャンペーンでは、義手製作に必要な7万ドルに加え、支援者にリターンとして提供するビデオの撮影やライブの開催に使う2万ドルを募っている。
支援は5ドルから受け付けている。例えば、10ドルだと新作アルバムのダウンロード、25ドルだとさらにビデオのダウンロードができる。50ドルだとライブのチケットがもらえて、2000ドルだとプロデューサーとしてクレジットされるとのこと。
Kickstarterでの支援受付期間は日本時間5月23日まで。目標金額の9万ドル(約965万円)に対し、記事執筆時点(日本時間4月19日17時)で集めた資金はまだ1205ドル(約12万9000円)。キャンペーン期間はあと34日ある。
なお、ジョージア工科大学はピアノを弾けるほど細かな制御が可能な義手もBarnes氏向けに開発した。
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