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ディズニー/ピクサー映画「リメンバー・ミー」の住人に--初VR作品について聞く

佐藤和也 (編集部)2018年04月13日 08時00分
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 ウォルト・ディズニー・カンパニー傘下で、米国の映像制作会社であるピクサー・アニメーション・スタジオが制作した、日本では3月から劇場公開している「リメンバー・ミー」(原題:「Coco」)。本作のプロモーションとして、ピクサーとしては初めてとなるVRコンテンツ「Coco VR」を配信している。この「Coco VR」を手掛けたマーク・ソンドハイマー(Marc Sondheimer)氏が来日。制作の経緯や、今後のVRの取り組みについて聞いた。

VR空間に再現された死者の国を、ガイコツとなって楽しむ

ディズニー/ピクサー最新作映画「リメンバー・ミー」メインビジュアル
ディズニー/ピクサー映画最新作「リメンバー・ミー」メインビジュアル

 「リメンバー・ミー」は、「トイ・ストーリー3」で監督を務めたリー・アンクリッチ氏が新たに手掛けたカラフルなアニメーション作品。音楽を禁じられた家庭のなかで育った、ミュージシャンを夢見る主人公ミゲルが、先祖たちが暮らす死者の国に迷い込み、冒険する姿を描いた物語。3月に発表した第90回アカデミー賞では、長編アニメーション賞と主題歌賞の2部門を受賞している。

 「CoCo VR」は、「リメンバー・ミー」のプロモーションを目的とし、Oculusとのコラボレーションによって制作。2017年11月の米国公開にあわせて、Oculus Rift用コンテンツとして無料配信されている。

 体験者が死者の国の住人となって、街中を移動しさまざまな体験が味わえるというもの。広場には自撮りができるフォトスポットがあるほか、野外シネマが開催され、他の住人とともに鑑賞するといったことも可能。またコンサートが行われているところに参加したり、ゴンドラに乗って死者の国の風景を堪能するといった楽しみ方もできる。

「Coco VR」のオープニング画面
「Coco VR」のオープニング画面

 冒頭では、部屋にある鏡を見て、VR空間内の体験者はガイコツということに気づく。衣装やアクセサリなどで自分の姿をコーディネートできるほか、頭を取り外したり付けなおすといったこともでき、それだけでもどこか楽しさを感じる。

 舞台である死者の国は、テーマパークのような華やいだ世界でもあることから、街中を移動しているだけでもビジュアルの美しさに感動するほど。と同時に、筆者は体験前に「リメンバー・ミー」を見ていたこともあるせいか、VRで再現された本編で出てくる場所に来ると「あの場所だ」と興奮を覚えた。

街中で記念撮影も可能
街中で記念撮影も可能

 ほかにも、建物の上から、なぜか置かれている紙飛行機を投げて飛ばすという、一見すると特に意味のないようなことでも、ついついうまく飛ばしたいと楽しんでしまうような、どこか日常をのんびりと過ごしたい、そんな気分にもなれた次第だ。

 本作は英語とスペイン語に対応し、日本語には対応していないが、それでもこの光景を見ることができただけでも十分と思えるほど。また筆者は体験できなかったものの、本作ではマルチプレイが可能で、同じVR空間内に複数人で楽しむことができるという。

ガイコツの頭が取れるという、体験者に向けた“フック”

マーク・ソンドハイマー(Marc Sondheimer)氏
マーク・ソンドハイマー(Marc Sondheimer)氏

――ピクサーが今回初めてVRコンテンツを制作した経緯を教えてください。

 ピクサーとして、かねてからVRコンテンツの研究は進めていました。VRがさまざまなところから話題として上がってきていましたから、興味を持っていましたし、VRを活用して何をするかを検討していました。そしてVRに適したテーマとなる作品、プロジェクトとして組めるかどうかなど、タイミングを見計らっていました。

 最初のプロジェクトとなるわけですから、短編物語のような作品として制作するのは難しいであろうと。そこで私が担当しているチームから、まずファーストステップとして、プロモーション目的のVR制作に乗り出すのはどうかと提案したのが経緯になります。

――初のVRコンテンツとして「リメンバー・ミー」をテーマとした理由は。

 タイミングもそうですが、「リメンバー・ミー」の世界観が素晴らしかったからというのもあります。舞台となっている死者の国は幻想的なきらびやかさがあり、テーマパークのような世界で、毎日目にするような光景ではありません。非現実的な世界が、仮想現実の舞台としては理想的とも言えます。

――劇場作品とは違うVRコンテンツならではの苦労もあったかと思います。

 制作を着手したときに思ったのは、場違いというと大げさですが「慣れない場所に来てしまった」というのが率直な感想ですね。そもそもVR体験というのはどういうものかを正しく認識し、そして体験者にどうしたら楽しんでもらえるかを考える必要がありました。

 難しかったのは、我々が作り上げたアニメーションの世界観を、リアルタイムに体験してもらうことでした。映画は受け身のコンテンツですが、VRは常にインタラクティブで体験できる世界ですから、どこまで物語を伝えて、どこまでインタラクティブに体験できるようにするのか、その頃合いやさじ加減には気を使いました。

 パートナーであるOculusが、VR空間内で体験者に対して、視線誘導などどのようにナビゲーションしていくのがいいかなどサポートしてくださったのは、すごく助かりました。マルチプレイの実装もOculusから話があり、ソーシャル要素を持たせたほうが、がぜん面白くなると。私たちも試してみてそう思いました。

――開発側として、どのようなところを楽しんでほしいと思いますか。

 人それぞれで自由に楽しんでほしいというのが素直な気持ちですが、ひとつあるとするなら、高いところから頭を投げてみてほしいですね。

――頭を投げられるのも、ガイコツならの体験ですよね。

 私たちも開発スタッフと一緒にゴンドラに乗ると、みんなそこから頭を投げます。広場はきっと、雨のようにガイコツの頭が降ってきて大変なことになっているでしょう(笑)。

 ガイコツであることを実感してもらうために頭を外せることが、体験者に対するフックとして特に効果的だと思いました。冒頭では鏡を置いてガイコツとなった自分の姿を見ることができますが、実際に頭を取る方も多かったですし、そこに反響がありました。多くの人にとって、CoCo VRを楽しんでもらうフックとなったのは間違いないです。

――ピクサーといえば、映像表現に最先端のテクノロジを駆使しているイメージがありますが、テクノロジをどのくらい重視しているのでしょうか。

 まず、ピクサーの土台にあるのはアートとテクノロジです。ただ、ピクサーとして最も重要なのは素晴らしい物語を伝えることであり、テクノロジはそのための手段といいますか、サポートするものだと思っています。私たちが伝えたい物語を、新しい方法で実現させてくれたり、新しい物語を生み出すために導いてくれる、役立つものを追及していくという考えです。

――テクノロジの進化で、制作や表現が変化したと感じることはありますか。

 テクノロジの進化によって確かに変わっているところもありますし、作業の効率化も進んでいるのは事実です。ただ、新しいテクノロジが登場するたびに、食べつくすように研究して活用しようとするので、安価に制作できるといった状態にはならないですね。より豊かな表現ができるようになると考えています。

――今後ピクサーとしてVR市場に、またARやMRといった領域も含めてどのように取り組むのでしょうか。

 体験者が、映画のキャラクターや世界を仮想空間のなかで、体験していただける意味では興味はありますし、インタラクションを持って接してもらうことに、新しい可能性を秘めていると感じています。

 この先成長していく領域だと考えていますが、ビジネス投資の視点で見ると、今の段階ではVR・AR・MRの市場は不確かな要素が大きいです。そのため、大型なコンテンツ制作に乗り出すというよりは、プロモーションとしてコンテンツをリリースして、動向を見ていくスタンスになるかと。もちろん挑戦することの意義は大いにあると感じています。

 今後もプロモーション施策としてのVR、ARやMRも含めたコンテンツは、制作を続けていきます。将来的には「トイ・ストーリー」で何か作ることができるといいな、と思っています。あくまで日本の皆さんからの強い要望があれば……ですけども(笑)。

※「リメンバー・ミー」は「アナと雪の女王/家族の思い出」と同時上映で公開中。
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