ただし、楽天の携帯電話事業参入に関しては、発表当初より多くの懸念が上がっている。総務省も電波割り当てに際して、楽天モバイルネットワークに対してだけ、ローミングに頼らず自社で全国にインフラを整備する、資金をしっかり確保するなど、4つの条件を付与している点からも、楽天の携帯電話事業参入に対して懸念がある様子を見て取ることができる。
最も懸念されているのは資金面だ。楽天は参入にあたって6000億円の資金調達を実施するとしているが、その額は大手キャリアが1年間に費やす設備投資額に過ぎず、不十分との声が多く上がっていた。これに対し楽天側は、過去に新規参入したイー・アクセスやUQコミュニケーションズが、4000〜5000億円の設備投資で全国をカバーするインフラを構築した事例を挙げ、6000億円でも全国のカバーは可能だとしている。
しかし、イー・アクセスやUQコミュニケーションズは、Wi-Fiルータなどデータ通信専用端末を主体にサービスを提供していたため、多少エリアの充実度が弱くてもユーザーへの影響は大きくなかった。過去を振り返ると、地方においては両社ともに全国をカバーしたと言いながら、実際には電波が弱く使えない場所が散見されており、UQコミュニケーションズの「UQ WiMAX」は現在も、auのネットワークを用いて不足しているエリアをカバーしている状況だ。
スマートフォン向けのサービスを重視する楽天の場合、音声通話が途中で途切れないためにも、両社よりも広いエリアカバーが求められる。エリアカバーが顧客満足度に大きく影響してくるだけに、楽天が想定した以上にコストがかかってしまい、資金不足に陥る可能性があることが、懸念されるところだ。
かつてソフトバンク(現在のソフトバンクグループ)が、ボーダフォンの日本法人を買収し、ソフトバンクモバイル(現在のソフトバンク)として携帯電話事業に参入した際、当初は価格の安さを打ち出す戦略に出たもののエリアカバーの弱さから消費者に評価されず、莫大な投資をしてエリアカバー対策を推し進めたことで、ようやく信頼を得たという経緯がある。それだけに、携帯電話事業で顧客から評価を得るためには、エリアカバーが最も重要であることを楽天は肝に銘じておく必要があるだろう。そのための投資を継続していけるかが、同社の成否を大きく分けるポイントになりそうだ。
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