楽天と岩手県釜石市は4月4日、訪日観光客需要の創出や地域経済の活性化の推進を目指し、包括連携協定を結んだと発表した。釜石市内の商業施設に決済サービスを導入するほか、外国人観光客をターゲットにした体験型アクティビティの提案や、民泊運用などをサポートする。
楽天は1997年にネット通販サイト「楽天市場」を立ち上げ、全国の中小事業者にネット通販のサービスを提供。商圏を全世界に広げるサポートをしてきた。すでに地方自治体との連携も推進しているが、決済サービスとインバウンドを組み合わせた包括的な連携は、今回が初めてになるという。
釜石市市長の野田武則氏は「東日本大震災から7年が経ち、やっと被災された皆さんの住まいの再建の見通しが立った。釜石市はこれまで被災地復興に全力を尽くしてきたが、再建と合わせ、復興後の地域活性化の取り組みも進めるべきだと考えている」と、釜石市の現状を説明した。
新たに取り組むのは、キャッシュレス決済の導入、外国人観光客に向けた体験コンテンツの造成、民泊、ふるさと納税とネットショップの活用の4つになる。
釜石市は、高炉跡の橋野鉄鉱山が世界遺産に登録されているほか、ラグビーワールドカップ2019の開催地にも決定しており、外国人観光客の増加が見込まれている。しかし、市内の商業施設では、クレジットカードや電子マネー決済に対応していないところもあり、現金が主流。今回の連携により、「楽天ペイ」を導入し、キャッシュレス決済の環境を整える。
導入するのは釜石市の商工会に加入している約200の企業とタクシー約60台。設備の費用は導入する企業が負担し、楽天は設置や使い方などをサポートする。
体験型アクティビティの提案は、釜石市に訪れた観光客の滞在時間を延ばすことが狙い。外国人旅行者向け体験サービスの仲介と提供を手掛ける、楽天グループ会社のVoyaginがサポートする。Voyaginでは「岐阜県・羽鳥の刀鍛冶体験」「京都市・大宮のサムライ体験」など、アクセスの悪い場所や、高価なオプショナルツアーでも、予約が尽きない成功例を紹介。ラグビーワールドカップ2019に訪れた観光客が、長く滞在することで、リピーターの獲得につなげる。
また、観光客増加による宿泊施設の整備には、民泊を活用する。この部分は楽天とLIFULLが共同出資した民泊専門会社、楽天LIFULL STAYが担う。空き家の活用も視野に入れ、民泊として貸し出すことで「維持費がかかる、壊すのにも費用が必要」など、オーナーの負担になっていた空き家を優良なアセットに変えていく考えだ。これら施策に加え、釜石市内の名産品をネット通販やふるさと納税などを介して、販路を拡大。国内外に広くアピールしていく。
楽天グループでは、宮城県仙台市に拠点を構え、今回の包括的連携をサポート。“小さな町の大きな挑戦”を支え、地域の発展に寄与していく。
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