楽天コミュニケーションズは3月14日、民泊運営支援サービス「あんしんステイIoT」を導入した民泊施設の見学会を実施した。IoT提供機器を披露したほか、民泊で重要視される個人情報取り扱い時における高度なセキュリティシステムなどを紹介した。
あんしんステイIoTは、楽天グループで、通信インフラに特化したサービスを提供している楽天コミュニケーションズと宿泊事業者向けの運用支援サービスを手がけるSQUEEZEが共同で開発したサービス。宿泊施設の運営に必要となる「宿泊者名簿作成」、「本人確認」、「鍵の管理」、「個人情報の管理」、「宿泊者のサポート」などの作業を、クラウドやIoT機器を使って軽減できることが特徴で、民泊や簡易宿泊施設のオーナー向けに展開する。
2月1日のサービス開始に合わせて発表会を開催。事業者受付を開始する前日となる3月14日に見学会を開いた。導入したのは大阪市淀川区にあるアパートメントホテル「Minn」。阪急線十三駅から徒歩5分の場所に位置し、周りには繁華街が広がり、ホテルなどの宿泊施設も多い。
Minnは2017年9月に開業。複数の飲食店が入居していたビルをマンション型宿泊施設へとリノベーションした。5階建てで客室は42部屋。スイートルームから2段ベッドを備え最大8名が宿泊できるファミリータイプまで9タイプの部屋をそろえる。現在の稼働率は91%。土日祝日はほぼ満室になっている。開業当初は日本人客7、外国人観光客3の割合だったが、昨今は半々となっており、外国人観光客の利用が急増。韓国人旅行客の学生グループや、ファミリーで訪れる中国人旅行者など、4〜5人以上の複数人数で利用する人が多いという。
Minnに導入するあんしんステイIoTは、導入済みのタブレットと6月以降に設置を予定しているスマートロック、騒音センサの3つ。今回はタブレットによる本人確認を含めたチェックイン機能を披露した。
6月15日に施工、改正する「民泊新法」「旅館業法」により、簡易宿泊施設ではタブレットなどによるチェックインが可能になる。その役割を担うのがあんしんステイIoT機器のタブレットだ。本体はHUAWEI製だが、中身のソフトウェアは独自に開発。受付から言語選択、パスポート、顔写真撮影による本人確認までをこれ1台で引き受ける。本人確認は、パスポートをカメラにかざし、その後本人の顔写真を撮影。その2つをSQUEEZEが持つコールセンターで有人によりチェックするという3段構え。
SQUEEZEでは、コールセンターのスタッフをクラウドソーシングによって確保しているため、多言語対応できるほか、自宅でも働けるとのこと。同様に清掃も宿泊施設の近くに住むスタッフにアウトソーシングする仕組みを整えている。
タブレットには楽天モバイルのSIMカードを内蔵し、サーバに直接宿泊者情報をアップロードできる仕組みを整えているほか、USB端子は、別のアプリなどをインストールされないよう、充電のみの機能へと改良。二重三重のセキュリティ体制を敷く。「セキュリティ部分が楽天最大の強み。グループ全体で保有する大量の個人情報を安全に管理できるノウハウがあるからこそ、多くの個人情報取得が必要となる民泊運営に生かせる」(楽天コミュニケーションズIPプラットフォームビジネス部第三グループマネージャーの岡崎功氏)と言う。
楽天コミュニケーションズでは、あんしんステイIoTの開発にあたりマンションを使った実証実験を実施。赤外線センサなどの導入も想定していたが、人数が正確に把握できない、人が通る度に発光し宿泊者が落ち着かないなどの理由から、採用を見送ったケースもあるという。また受付スペースを持たない民泊施設では、入室してからチェックインをする流れになっているが、これも真夏の暑い中、外でチェックイン操作を行うのは困難と判断したため。こうした実証実験を踏まえてあんしんステイIoTを開発したという。
今後導入するスマートロックは、美和ロック製のものをあんしんステイIoT用にカスタマイズして採用。オムロン製の騒音センサとともにゲートウェイとの通信にはBLE(Bluetooth Low Energy)を採用することで、省電力性を確保。電池切れで使えなかったというダメージを回避する。
楽天コミュニケーションズでは、宿泊施設の需要は2020年に19万室に達すると見込む。一方で、宿泊施設の運用を代行する事業者は、2年前に約60社程度だったものが2018年には280社程度にまで急増している。IoT機器を導入し宿泊者の利便性を打ち出すとともに、問い合わせ対応や鍵の管理、本人確認といった運用の負担を減らすことで、あんしんステイIoTの導入を狙う。
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