アリゾナ州テンペ警察がUberの自動運転車による事故の捜査を開始してから、1週間以上が経った。米国時間3月18日、自動運転モードで走行中の車両によって起きた、初めての歩行者死亡事故のことだ。
原因は何だったのか、明確な結論はまだ出ていない。
アリゾナ州警察と連邦捜査官は、事故を起こした車両と事故現場の捜査を進めるとともに、事故車で使われていた技術、車両操作員、亡くなった歩行者についても情報を集めている。また、車載カメラが事故当時に記録した動画についても分析中だ。
この動画は21日にテンペ警察によって一般公開された。動画には、亡くなったElaine Herzbergさんが赤い自転車を押しながら、暗い路上を歩く姿が写っている。運転席に座っていた車両操作員のRafaela Vasquezさんは、たびたび視線を下に向けており、被害者とぶつかる瞬間にようやく目を上げる。生々しい映像で、見ているだけでも痛ましい。
人間が運転していたらどう反応したのかは不明だが、自動運転車に詳しい一部の専門家はこの動画を見て、衝突する前に各種の車載センサがHerzbergさんを捉えていたはずだと語っている。
自律人工知能を開発しているテクノロジ企業のCorticaはこの動画を分析し、米CNETはその評価を独占的に入手した。分析の結果、衝突の0.9秒前に、Herzbergさんと車の距離は50フィート(約15m)あったと推定される。同社の最高経営責任者(CEO)Igal Raichelgauz氏によると、自律走行車が反応して事故を未然に防ぐのに十分な時間だったはずだという。
「機械による応答時間と制御の利点、そして適切な対処によって、確実に被害を抑えられたはずだ」(Raichelgauz氏)
テンペ警察によると、被害者の姿を認めた瞬間に車は減速も方向転換もしていなかったという。衝突時の時速は約60kmだった。
Uberの広報担当者は、電子メールによる声明でこう述べている。「この動画は痛ましいものであり、Elaineさんのご遺族には哀悼の意を表明する。当社の車両は運転を休止しており、地元、州、連邦の各当局にはあらゆる形で協力しているところだ」
自動運転車には、カメラ、レーダー、LiDAR(ライダー)センサから成るシステムが搭載されており、周囲を「見て」、交通量、歩行者や自転車、その他の障害物を検出することができる。前方に歩行者を感知した場合は、車両が停止することになっている。各センサは、昼間だけではなく夜間でも同様に機能すると言われている。
「この動画だけですべては判断できないが、Uberの自動運転システムに原因がある可能性は高い。確かに、被害者は暗がりで捉えにくいが、路上を移動中だった。LiDARとレーダーは間違いなく被害者を感知し、静止物体ではないものと分類していたはずだ」。サウスカロライナ大学法律学の教授で自律走行車についても研究しているBryant Walker Smith氏は、こう話す。
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