Facebookのデータ流出スキャンダル、問われるFBの自主管理能力 - (page 4)

高まる政府介入の可能性

 影響力が大きくなりすぎたIT大手ーー具体的にはAmazon、Google、Facebook、それにAppleなどーーに対する危機感がワシントンD.C.で高まっている話が2017年の夏頃から一部に出ていた。かつてのオバマ政権とシリコンバレーとの蜜月を思うと隔世の感がある。

 そうした流れを受けて、今回の一件でも、リソースの乏しいFTCに代わる存在としてDigital Protection Agency(DPA)なる公的機関を新設して、消費者データの保護にあたらせるべきといった案が具体的に浮上している。

 それとは別に、ソーシャル分野とそれに付随する通信分野で事実上の独占企業となったFacebookを改めて分割すべき(具体的には「WhatsApp」と「Instagram」を親会社であるFBから切り離す、アドネットワークも分社化するといった内容が含まれる)という論調の記事さえ見られる。

 いずれにせよ、もしFB自身がしっかりユーザーデータを守れるとの安心感を外部に与えられなければ、議会や政府など公的権力を後ろ盾にした外部による規制や監視の強化を求める声が高まる公算が高い。この点について、ホワイトハウス元関係者(ブッシュ政権スタッフ)の女性がCNBCに対して「今年秋の中間選挙後、遅くとも来年には連邦議会で関連の法整備など何らかの動きがある」との予想しているのも目を惹く。すでに話が浮上している米英議会でのZuckerberg氏による証言だけでは済まないかもしれない。

 この規制に関連して、すでに欧州では「一般データ保護規則」(GDPR)がこの5月から導入されることが決まっている。

 これは元々、米国の緩すぎる規制に業を煮やしたEUが、FBやGoogleなどにある程度タガをはめるために決めたものとの印象もある。

 そんな欧州の規制にも触れたNYTの記事の中には、Vera Jourova氏(欧州委員会で法務、消費者権利、男女平等を担当)の「(CAによるFBデータ不正取得と利用は)単なる個人情報の侵害よりもずっと深刻な問題。我々が目にしているのは民主主義に対する脅威だから」といったコメントがあった。

 いずれにせよ、膨大なユーザーデータという宝の山を手に入れたFBが、その宝の山をきちんと管理し、サードパーティーを監督できる力と仕組みがあることを示せなければ、政治家や役人が口出ししてくることはほぼ必至である。それが「ユーザーのプライバシー保護」でとどまっているうちはまだいいが、かつて米国家安全保障局(NSA)が行っていた「Prizm」(大規模な監視プログラム)のような例も考え合わせると、それを突破口としてFB(やGoogle)の持つ宝の山を別の目的に悪用しようとする公的権力(法執行や秩序維持を担当する機関)が登場しないとも限らない(もっとも、中国政府がすでに始めている管理システム「ソーシャルクレジット」のようなものを米国政府があからさまにやるわけにはいかないだろうから、やるとすればもっとこっそりと行われるだろう)。

 そうしたディストピア的な可能性の芽を摘むためにも、FBにはしっかりとした自主管理能力があることをはっきり示す必要があると思う。

 日本のユーザーにとっては、この話のFacebookを例えば「LINE」に置き換えて読むと、英米のメディアが大騒ぎしている理由が少しはよく感じ取れるかと思う。アプリをダウンロードしてユーザー登録しようとすると、「連絡先(電話帳)のリストを取得してもいいですか」などと聞いてくるものはいまだに少なくない。今回の一件は決して対岸の火事では済まされないはずである。

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