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AIが作ったコンテンツの著作権はどうなる?--福井弁護士が解説する知財戦略 - (page 2)

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AIコンテンツのデメリット

 AIが作ったコンテンツが世に広まっていくと、果たして社会にはどんな影響があるのか。まずは低コストでコンテンツを大量に産み出せるようになるため、知の豊富化が進むと考えられる。福井氏は例として、AP通信によるマイナー競技の試合結果記事自動化を挙げる。「米国野球のマイナーリーグはチーム数が100以上。その全試合の記事を自動配信している。従来なら到底できなかったが、記者を派遣することなく、今やスコアさえ送ってもらえば記事になる。それを低コストで配信できれば、ホームタウンを離れた人にも読んでもらえる。ビジネスの可能性としては計り知れない」(福井氏)


AIコンテンツのメリット・デメリット

 反面、コンテンツが増えれば価格破壊が進む。例えば、ある1人の小説家が産み出すコンテンツは、全部が全部、最高品質とは限らない。ルーチンワーク的に生活のために執筆があり、その日常の中から稀に超高次元の作品が生まれる。しかしAIがこうした日常的なレベルの執筆を代替できるようになると、小説家の収入が減り、高次元の作品が生まれる可能性を潰す恐れもある。

 「パクリ」の増加も懸念材料である。AIは元々あるデータやコンテンツを元に、新たなコンテンツを作る。しかしその加工行程はブラックボックスになっていて、盗用などが疑われても、その実態を証明するのが難しい。

 2016年末に大きな問題となったDeNAなどのまとめサイト問題では、記事の無断転用にあたって「リライトツール」の存在が取り沙汰された。元記事を単純にコピー&ペーストするのではなく、このツールで「てにをは」を自動で書き換え、検索エンジンでの低ランク評価を回避する目的で使われたとみられる。

 福井氏が試した限り、このツールは性能面では決して優れたものではなかった。しかし今後は、AIの進化によって、変換品質は当然向上すると予想される。


リライトツールの精度がAIで上がってしまうとなると……?

 加えて、日本の裁判の判例では、著作権侵害を証明するためのハードルは高いとされる。「(元の文章と)かなり似ていないと、著作権侵害の判決は出ていない。『明らかに元ネタにしているね』という程度ではダメ(編注:侵害を訴えた側が勝訴できない)。裁判になっても侵害判決が出ない程度のリライトツールは、それほど開発が難しいと思えない。もしそんなツールが出てきたら『適法パクリ』が誕生するかもしれない」(福井氏)

 また、AIコンテンツは、悪く言えば「コピーの連鎖」に過ぎない。マーケティング主導でヒット作の後を追うばかりになれば、まったくの新しい表現が生まれる可能性は低く、これでは「知の縮小再生産」にとどまってしまうとの声もある。

AI学習データの集め方、そして守り方

 AIコンテンツのリスクを抑え、いかにメリットを最大化するか──これが今後の著作権を考える上で最も重要な部分だ。「AIコンテンツの著作権は今まさに設計段階。政府でもまさに議論が進められていて、固定された1つの答えが出ているわけではない」と福井氏は述べ、講演中に紹介した事例などをもとに、今後の方向性について皆で考えてほしいと呼び掛けた。


AIコンテンツの著作権を巡る論点

 論点としてまず福井氏が挙げたのは「解析用データ」の扱いだ。AIの学習にあたって必要となるものだが、著作物は原則的に第三者利用に制限がある。では、著作権のないデータはどうだろうか。例として気象データ、医療データ、将棋の棋譜などが挙げられたが、これらも第三者利用から守ることはできる。一般的なウェブサイトと同様に、「利用規約」でAIを制限するのだ。

「(物理的にデータのダウンロードを制御する)アーキテクチャー面に加え、利用規約によって現在はデータが守られている。今後のAI・ビッグデータ時代は、利用規約の設計力が重要になってくるだろう。ここが知財戦略の第1歩」(福井氏)

 とはいえ、技術や新サービスの発展には解析用データが欠かせない。利用規約による制限も過度な場合、独占禁止法に抵触する恐れが出てくる。国際的な潮流を考えれば、制限と利用促進のバランス取りが重要だと福井氏は指摘する。

 なお、現行の著作権法47条の7では、電子計算機による情報解析目的のための著作物利用が認められている。これは諸外国と比べても踏み込んだ条文で、「日本は機械学習大国である」という指摘すらある。また、データ解析サービスなどを可能とするための著作権法改正案が2月に閣議決定されている。


データの保護も重要だが、利用促進も忘れてはならない

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