もう1つの論点が「AI生成物は著作物なのか?」である。著作物であれば、作成者がAIであっても第三者は勝手に利用できない。仮に著作物であるとすると、自動作曲サービスで作成された楽曲の第三者による利用や流通は大幅に制限される。
これに対する国際的な通説は「人がコンピューターを道具として使えば著作物」。ただ、創作の主体はあくまで人でなければならない。これは、人がカメラ(という道具)を使って撮影した作品を著作物として扱う考えと近い。逆に、人が主体とならず、ボタン1個で生成されるような楽曲は、著作物ではないとされてきた。
よって、「AI生成物は著作物ではない」というのが、日本における支配的な通説である。
一方で、フランスの著作権管理団体はAI作曲による楽曲管理を開始している。「現実はこれまでの議論をすでに追い越している。AIは疲れないから、その作品は無限に増加していく。今までの百倍のスピードで増えていくコンテンツのすべてに著作権が発生するとなると、例えば似た楽曲を後から作った作曲者は著作権侵害になるのだろうか? もしかしたらクリエイターの萎縮や、AI版のパテント・トロールの発生に繋がるかもしれない」(福井氏)
また、AIの生成物なのに人間が「自分が作った」と主張するとどうなるか。第三者がそれを検証する手段はほとんどないが、理論的にこういった主張ができる以上、結局大量のAIコンテンツについて著作権が主張される可能性は高い。最後に福井氏は「急速な時代の変化と並走しながら、法律だけでなく規約(契約)やアーキテクチャ、カルチャーといったツールをどう組み合わせて知的財産の戦略を描くか、企業をはじめとした各プレーヤーが主体的に考える必要があるだろう」と語り、講演を締めくくった。
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