2月27と28日の2日間に渡って開催された「CNET Japan Live 2018 AI時代の新ビジネスコミュニケーション」。2日目のNTTドコモによる講演では、同社が推進するオープンな対話型AIサービス「AIエージェント」について紹介。そのコンセプトや仕組みの解説を通じて、企業がAI開発で万能性を意識しがちな風潮に待ったをかけた。
登壇したのはNTTドコモ サービスイノベーション部 担当課長の大庭隆伸氏。機械学習を含む音声認識の研究に長年携わってきた同氏は冒頭で、かつて同僚から指摘された「(AIが)いろいろできるというのは、何もできないようなもの」という言葉を紹介。多くの企業が“いろいろできる”AIを意識してデバイスやサービスを開発するケースがあることに対し、「いろいろできる必要はない」ことを訴えた。
それを証明するために紹介したのが、同社が手がける「AIエージェント」というオープンな対話型AIサービス。NTTドコモが2017年4月に発表した中期戦略「beyond宣言」のなかで挙げられた要素の1つで、バックグラウンドにあるさまざまなサービスのデータを活用しながら、あらゆるデバイスが人と対話できるようにすることを目指した取り組みだ。
同氏によると、従来の一般的な対話型AIの考え方は、Appleの「Siri」、Googleの「Google アシスタント」、NTTドコモでいえば「しゃべってコンシェル」のキャラクターである「ひつじのしつじ」のようなものであり、「1つのキャラとして作り上げ、それを全知全能の神にする」方向性で開発されているという。しかし、同社のAIエージェントはそれとは異なり、「メインエージェント」と「エキスパートエージェント」の大きく2種類に分けた設計だという。
メインエージェントは、「デバイス、アプリケーションに話しかけたときに最初に受け答えしてくれるもの」で、秘書やコンシェルジュのようなものと考えると良いだろう。対してエキスパートエージェントは、特定のサービスに特化しているもの。天気予報や道案内など、限られた分野の情報に精通するエキスパートだ。ユーザーが最初にメインエージェントと会話すると、ユーザーの求める内容に応じてエキスパートに取り次ぎ、情報を引き出している。「電話でいうところの交換機みたいなもの」と大庭氏は語る。
しかし、そのようなエキスパートエージェントは、NTTドコモだけで開発するのは難しい。そこで、同社はオリジナルのエキスパートエージェントを誰でも生み出すことが可能な専用作成サイトを提供。メインエージェントをデバイスなどに容易に組み込むためのSDKも公開中だ。この仕組みを利用したAndroid向け「おしゃべりアプリ」もリリースされており、企業独自のデータを生かした多様なエキスパートエージェントが増えていけば、ユーザーがデバイス(アプリ)を通じて得られる情報も増えるエコシステムを実現できるという。
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