朝日インタラクティブは2018年2月27~28日、都内で「CNET Japan Live 2018 AI時代の新ビジネスコミュニケーション」と題したイベントを開催し、ビジネスを成長させるコミュニケーションのあり方を議論した。ここでは日本マイクロソフトのAIに対する25年の取り組みを紹介する。
MicrosoftにおけるAI(人工知能)への取り組みは、1991年にRichard Rashid氏が設立したMicrosoft Researchの時代までさかのぼる。長年にわたって基礎研究を続け、2016年10月にはMicrosoft社内にAI製品の開発や基礎・応用研究、新技術開発を担当する5000人規模の新部署、Microsoft AI and Research Groupを設けた。この25年にわたる取り組みを踏まえて日本マイクロソフトは、「我々は突然出てきたAIベンダーではない」(日本マイクロソフト プラットフォーム戦略本部 本部長 大谷健氏)と強調する。
Microsoftは2016年9月にAIのベストプラクティスを共同研究して、人と社会に役立てる団体「Partnership on AI」をDeepMind(Google)、Facebook、IBMと立ち上げ、2017年9月にはFacebookを始めとするAIベンダーと共に、AIフレームワーク間の相互運用性を担保するための共通フォーマット「ONNX(Open Neural Network Exchange)」を発表。CNTK(Microsoft Cognitive Toolkit)やTensorFlow、Theanoなど任意のフレームワークで開発した深層学習モデルを別のフレームワークで利用可能にする。
同年10月には開発者が複数の深層学習ライブラリを交互に実行可能にする「Gluon」をAWS(Amazon Web Services)と共に発表した。このようにAIに対して精力的にコミットするMicrosoftだが、「我々は人間が持つ感情や肉体、感性といった能力をAIで広げるのが目的。北米でリリース済みの『Seeing AI』は、視覚障がい者や視力の弱い人を支援する」(大谷氏)と人の能力を補完、そして拡充させるためにAIを活用すると自社の取り組みを披露した。
日本国内でもAIに関する事例は多岐にわたる。博報堂とは鏡に映り込んだ人間の表情を元にターゲットマーケティングを行う「Face Targeting AD」、エイベックス・グループ・ホールディングスとはライブ来場者の表情を元に属性や満足度などを分析するソリューションの実証実験を開始。フジテレビおよびアロバとは、とあるバラエティ番組でお笑い芸人に似た方を撮影し、顔認識技術でマッチレベルを測定する番組コーナーを放送した。JTBおよびナビタイムジャパンとは、チャットボットや自然言語解析エンジンを用いて訪日旅行者を支援するアプリ「Japan Trip Navigator」をリリースしている。このように多数の取り組みを行う日本マイクロソフトだが、今回はとある商業施設との取り組みを披露した。
伊勢神宮の参道で飲食店や小売店など商業施設を営む「ゑびや」は、人の感覚を数値化するデータドリブンで日々のオペレーションを最適化している。ゑびやは、「(これまでは)小売店に観光客が訪れた際の属性を取得せず、現場の勘に頼っていた。データから顧客属性や通行客属性と入店属性の食い違いを可視化し、入店率から店頭ディスプレイの効果検証を行う」(ゑびや 代表取締役 小田島春樹氏)ためにAIを導入したと語る。
導入前は経験則に基づいて食材の仕込みやスタッフのシフト体制、消耗品などの発注を計画していたが、Microsoft AzureのCognitive Servicesで画像解析、Machine Learningで来客を予測することで、「1時間/翌日/週間単位の予測と各オペレーションの見直しが可能になった。現在は90%弱の正解率に達し、Power BIを使って現場のアルバイトスタッフでもオペレーションの変更を可能にしている」(小田島氏)。また、ディスプレイレイアウトの効果測定結果を元に変更を加えたところ、前年売り上げ対比80%増に至った。小田島氏は、「『課題解決のためにどんな技術を使うのか』が大事」と語る。
4EB(エクサバイト)のデータで機械学習を終えているCognitive Servicesは現在29の機能を提供し、現代のビジネスに欠かせないデータドリブンを可能にしてきた。「顧客の負担を軽減し、『AIがビジネスの足かせにならない』仕組みとしてMicrosoft Azureは、データ収集・保存・分析・ビジネス活用という流れをシームレスに提供する」(大谷氏)。
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