選ばれし企業はわずか2.5%--世界最大の起業家支援ネットワーク「エンデバー」 - (page 2)

 このエコシステムにより、同社が支援した企業の生み出した利益は、2015年の1年間で81.6億ドル(約9000億円)。2016年までに全体で65万人の雇用を創出したとしている。エンデバーの活動資金は、ボードメンバーからの寄付金、もしくは協賛企業からの出資などでまかなわれており、支援した起業家や企業の利益が直接エンデバーの利益に関係してくるわけではない。支援した起業家が成功して、新たな起業家を育成する側へ回り、さらに成功者を増やしていくという循環こそが、エンデバーにとっての利益なのだ。

 したがって、エンデバー・アントレプレナーとして選ばれる起業家は例外なく、社会に還元する精神を持ち合わせていることが求められる。たとえタイミングのかみ合った有望なビジネスモデルがあり、起業家として望ましいリーダーシップや柔軟性を備えていても、「成功後の還元の意思」がないと見なされれば選出には決して至らない。逆に言えば、その意思がある起業家なら、ビジネスモデルやタイミングの面で納得させられない部分があっても、その課題を解決して諦めずに再挑戦すれば、選出の可能性がある。


選考において重視される審査項目

 審査する側となるボードメンバー、メンターらは全員が手弁当であり、彼ら自身も当然ながら強い社会還元の意思をもつ人たち。起業家とは「審査する側、される側」のような単純な関係に止まらず、ビジネスの成功を確実にして社会の還元につなげるため、互いに全力で議論し、納得するまで意見をぶつけ合う。

 国際選考会の最後には、そんな6人のパネリストの間で意見交換してエンデバー・アントレプレナーを決定する。そこで一度は反対に回ったパネリストがいても、その反対理由となる不安を払拭するべく他のパネリストが解決策を提案して説得するという役回りを演じることもある。また、一度は選考途中で漏れた起業家でも、選考過程の面接などで得たヒントを元に再び国際選考会を目指し、選出に至る例も少なくない。「むしろその後大きく成功しているのは、一度不合格になっている起業家に多い」(眞鍋氏)のだという。

日本企業も5社がエンデバー・アントレプレナーに

 日本でもこうした厳しい審査を見事クリアし、支援対象として選ばれる企業が現れた。WHILL、Sansan、ラクスル、ユーザベース、セブンドリーマーズの5社だ。眞鍋氏によれば、日本国内で初期のスクリーニングにかけた企業はすでに300社を超える。そのうちの5社なので、選出率としてはやはり2%に満たない低い数字だ。

 2017年3月に本格稼働を始めたエンデバー・ジャパンはこの1年、候補企業の選定や、「日本企業に対する支援内容の構築」(眞鍋氏)に注力してきた。ANAの「BLUE WING」との提携を2017年11月に発表したのはその成果の1つだ。BLUE WING プログラムは、利用者が飛行機で移動したり、マイルを寄付したり、SNSでシェアしたりすることで、起業家のフライト代を支援する独自プログラムとなる。


起業家にフライトチケットを支援するANAの「BLUE WING」のウェブサイト

 BLUE WING × Endeavor プロジェクトの期間は、2017年11月2日〜2018年3月末まで。エンデバーの活動にともなうフライトの支援に加え、プロジェクトページをFacebook、Twitter、LinkedInでシェアすることで、1回につき15WINGS(1WING = 1円)相当の支援が、BLUE WINGを通じてフライト支援額に加算され、Endeavorへと還元されるという。

 こうした日本での取り組みは進めていたが、これまではいわば種まきに近い活動だった。2018年以降は、選出された5社の「実績につなげるサポート」に加え、「選出、支援できる企業を増やすこと」が活動の中心となっていく。

 また、これまで選出の候補としてきたのは純粋なスタートアップ企業というより、ビジネスのスケールアップの段階にある中規模程度の企業だった。眞鍋氏は、できればより小さな企業も支援していきたいと語る。「日本企業のポテンシャルは高いと思っている。宝がたくさん眠っているのに、海外に出ていないのがもったいない。文化、言語の壁などもあるかもしれないが、それを解決するお手伝いをして、日本企業に世界で活躍できるという気付きを与えたい」。

 現在、日本拠点のスタッフはわずか数名。これを増員することが喫緊の課題であり、まだ十分にいるとは言えない日本のメンターも増やしていく方針だ。ボードメンバーは、LIFULL代表取締役社長の井上高志氏、Mistletoe代表取締役社長の孫泰蔵氏、ヤフー上級執行役員宮澤弦氏、C Channel代表取締役の森川亮氏など豪華な顔ぶれ。人数も14名と、他拠点に比べるとやや多いという。


エンデバー・ジャパンに所属するボードメンバー14名

 もちろんエンデバー・ジャパンの活動資金の一部も彼らのポケットマネーから出ているが、眞鍋氏は、ボードメンバーらの「本気度は並大抵のものではない」と強調した。「全員、起業家に対してノウハウやコネクションなど、与えられる何かをもっている人たち。名前を貸すだけとか、お金を出すだけとかではない。新たな世代の起業家や起業家コミュニティを育てるために、ほとんど命を賭けている」。

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