米国の中1、高1、高3年生の100万人以上を対象としたアンケートデータ「Monitoring Future Study」の結果が興味深い。1990年から集計しているもので、中には幸福度を問う質問も含まれる。それによると、1990年から2000年頃までは自尊心や幸福度は上昇傾向にあるが、2012年以降は下がり続けている。2012年と言えば、スマートフォン普及の年でもある。
論文の筆頭著者である心理学教授のTwenge氏は、「若者の幸福度下落が見られた年とスマートフォンの普及は時期が重なっており、影響していないと考えるのは難しい」と話している。
Twenge氏は自説を確かめるため、視聴する画面(「スマホなどの端末」「テレビ」「画面を見ない」で分類)と毎日何時間見るかによって若者をグループ分けして比較。その結果、画面を見る時間が多いほど幸福度が低く、自尊心も低かった。逆に、友だちと過ごす時間や運動する時間、勉強する時間が多い若者ほど幸福度が高かったという。
この結果だけではスマートフォンなどの使用時間と若者の幸福度の関係が証明されるわけではない。しかし、まったくの無関係ということも証明されていない。スマホの利用時間が長いと、10代の子どもたちは幸福度が下がってしまうのだろうか。相関関係と正しい付き合い方について考えていきたい。
10代のスマートフォン利用を考える上で外せないのが、SNSの利用だ。10代は他の世代と比べてSNSの利用時間が長い傾向にあるため、SNSの利用が鬱などにつながりやすいという研究結果は少なくない。
米国の19〜32歳を対象としたピッツバーグ大学医学部の研究チームの研究によると、SNSの利用頻度を比べた時、頻度が高い人は低い人に比べて鬱病になるリスクは2.7倍に高くなった。また、利用時間について比べた場合も、1日中SNSを利用している人は利用時間が短い人と比べて鬱病になるリスクが1.7倍になった。
英王立公衆衛生協会(RSPH)が2017年に発表したところによると、InstagramはほかのSNSに比べて若者の心の健康にもっとも悪影響を与えることがわかっている。不安感や孤独感、いじめ、外見への劣等感などの否定的な影響が、ほかのSNSより高い傾向にあった。
RDPHは、SNS各社に対して自分が使いすぎていることが分かるように警告を表示したり、投稿内容から精神衛生上の問題がありそうな利用者に周囲にはわからないように提供すべきと提案している。つまり、使いすぎることには心に悪影響がありそうなのだ。
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