MacBook Airがつくった10年とこれから--2008年の誕生から振り返る - (page 2)

“Air”の意味

 Appleは1999年に「AirPort」(日本では商標の関係からAirMac)として、無線LANステーションの製品を登場させている。またMacBook Air以降は、iPad Air、AirPods、AirPowerと、「Air」という単語を活用した製品名を用意してきた。

 MacBook Airは、製品デザインそのものが非常に薄く宙に浮いているような存在感であったこともあるが、ポート類を必要最小限以下に減らしたかわりに、ワイヤレスでまかなう方向性を示す意味合いがあったと考えられる。


 象徴的なのは、これまであらゆるノート型Macに搭載をいとわなかった、光学式ドライブを排除したことだった。MacBook Proも、2012年のRetinaディスプレイ採用モデル以降、光学式ドライブは内蔵されなくなった。それまでAppleがDVDを高速で焼ける光学式ドライブに「Super Drive」と名付けて誇ってきたにもかかわらず、だ。

 これは、Appleがコンピュータからモバイル主体の企業へと転換する方針とも符合する。簡単に考えてみて欲しい。スマートフォンで音楽や映画を楽しむために、光学式ドライブを活用することは、どう考えても不自然であり、iTunesはCDを葬り去った段階で、コンテンツをデータでダウンロードして楽しむことを選択済みだった。

 MacがBlu-rayを搭載しないことに不満を持っている人は(今でも)いるが、2017年からは4K HDRコンテンツもiTunesで配信し始めており、Mac向けにもApp Storeを用意。アプリのインストールもワイヤレスで行える環境をとっくに整えている。

 「Air」、すなわちワイヤレスに大きく依存するスタイルを体現するノート型MacとしてAppleが提案していた。Appleの転換とコンピューティングスタイルを発展させる意味合いが、MacBook Airの「Air」から垣間見られる。

コンセプトとして消化されたAir


 現在の主力製品は、MacBook Air 11インチモデルの後継に位置づけられる12インチMacBookに加え、13インチMacBook Pro(Touch Barあり、なし)、15インチMacBook Proの4モデル。

 いずれも、薄型軽量のデザイン、最小限のポート、光学ドライブなし、フルサイズのキーボード採用というMacBook Airの思想を前提に作られており、新世代モデルらしくディスプレイは高精細のRetinaディスプレイが採用されている。

 MacBook Airは999ドルからと最も価格が安いノート型Macの選択肢として、13インチモデルのみがラインアップに残されているのみとなった。2015年が最後のアップデートになるかと思われたが、2017年6月には最新の第7世代Intel Core(Kaby Lake)にアップデートされ、モデルは継続している。

 1000ドル以下で「iPhoneアプリを開発できる最も安いノート型PC」という位置づけで、開発者や教育市場で引き続き需要がある製品となっている。

 しかし同時にAppleは、非常に高い処理性能を誇り、タッチスクリーンを備えてMacBook Airより価格が安いiPad Pro 10.5インチを、パーソナルコンピュータの代替として提案し始めた。ますます、薄型軽量でシンプルなコンピュータとしてのMacBook Airの立場はApple製品の中でも奪われているのが現状だ。

 おそらく今後、MacBook Airが新モデルとして登場する可能性は低いだろう。しかしMacにとって、Appleにとって非常に重要な製品であったことは間違いないし、その経験と思想は今後の製品にも受け継がれていくだろう。


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