インターネットイニシアティブ(IIJ)は12月18日、日本医事保険教育協会、Windyと共に健康被害の抑制および、医療費の適正な指導を目的としたICT活用コンソーシアムを設立したと発表した。
同社によると、日本における高齢化率は2016年で26.7%となり、先進国の中で最も早く高齢化問題に直面するといわれているという。高齢化の進行に伴う課題として、医療費の増大が挙げられるが、医療費の総額は過去10年間で27%増加。中でも調剤医療費が71%と大きく伸びている。
それに対し、政府はいわゆる門前薬局から地域のかかりつけ薬局への移行やジェネリック薬の使用、重複投与・多剤投与の抑制等の対策を推進しているが、重複投与・多剤投与の抑制に関しては、効果的な手法が確立されていない状況だ。
同コンソーシアムでは、他の都市と比べても急速に高齢化が進んでいる北九州市において、患者への重複投与・多剤投与の抑制に向けた実証実験を開始する。ICTを活用して重複投与・多剤投与を抑制し、患者のポリファーマシーによる薬害低減を図りながら、無駄をなくした医療費の適正な指導を実現する薬剤ソリューションの開発を目指すという。なお、ソリューションの提供先としては、医療保険者を想定している。
まずは、2018年1月にレセプト情報(医療報酬の明細書)の分析を行い、医療費適正化の効果検証および、重複・多剤投与患者のリスク評価を実施。その後、分析結果を基に患者への指導を通した処方適正化をすすめ(2018年2〜6月)、服薬状況を見える化することで患者のさらなる健康増進を図る(2018年7〜12月)。
同実証実験では、薬局が医療保険者に対し、保険者の負担分を請求する際に使用する「調剤レセプト情報」を匿名化処理のうえ、クラウド上で分析。薬種は違うが効果が同等の投与あるいは、多剤投与を受けている患者を抽出する。
また、そのリストを基にICTを活用した医療連携を通し、患者に対する注意喚起および、服薬指導を実施する。なお、同事業は九州ヒューマンメディア創造センターの支援を受け、実施する。
具体的には、「レセプト情報分析」「投薬指導」「コミュニケーション促進」「飲み忘れ防止・残薬管理」の4つについて実験する。
レセプト情報分析では、医療保険者が管理する「調剤レセプト情報」に匿名化処理を行ない、IIJのクラウドサービス「IIJ GIO(ジオ)」で分析。重複・多剤投与の洗い出しとそのリスク評価を通して、医療費および、薬害回避の適正化がどの程度見込めるかをシュミレーションする。
投薬指導では、分析結果を基にリスクが認められるケースをリスト化。日本医事保険教育協会の保健指導サービスおよび、かかりつけ薬剤師による指導計画を立案する。そして、対象の患者に対する重複・多剤投薬の注意喚起とともに、投薬指導や残薬確認を行う。医師と投薬の調整を行ない、その旨を家族へも通知する。
コミュニケーション促進では、医療機関、薬局、医療保険者など患者を取り巻く関係者間でコミュニケーションをとるための仕組みとして、愛知県自治体ですでに導入実績のあるIIJの地域包括ケアシステム「IIJ電子@連絡帳サービス」を活用する。
飲み忘れ防止・残薬管理では、服用日や服用時間といった必要事項を印字した用紙をトレーに貼り合わせて封止(一包化)するWindyの「お薬カレンダー」を活用。トレーや用紙には切り込みが入っており、服用時には簡単に切り離せるようになっているのが特徴。また、「お薬カレンダー」により飲んだ薬の見える化が可能となり、飲み忘れの防止に繋げられるという。
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