Eコマース中国最大手のアリババがこのほど、Eコマースに特化した講座「アリババ・ビジネス・カレッジ」をシンガポールで開講すると発表した。アリババが提供する講座の内容、またその狙いに迫る。
Eコマース中国最大手のアリババは、中国国内だけでなく海外、特に東南アジアで攻勢を強めている。
2016年には「東南アジアのアマゾン」と言われるEコマース最大手の「Lazada(ラザダ)」を買収。ラザダと連携し、アリババの通販サイト「淘宝網(タオバオ)」を6カ国で展開するほか、電子決済「アリペイ」の普及を目指す。
2017年8月には、インドネシア本土におけるEコマース最大手の「トコペディア」に巨額融資をするなど手を緩めていない。
そしてシンガポールでこのほど、アリババ・ビジネス・カレッジの開講を発表。2018年1月から、アリババとシンガポール全国労働組合会議(NTUC)の協働で開講される。
アリババ・ビジネス・カレッジとは、地場の個人事業者や中小企業を対象としたEコマースに特化した講座のこと。世界のEコマース市場の動向やシステム構築、物流や決済などネット通販に関わるノウハウを提供するものだ。
講座は以下の4種類。
講座は計12日間で、約150名が対象。講座は英語で提供され、シンガポール人だけでなく外国人も受講できる。規定のコースを修了すると「Eコマース・スペシャリスト」または「Eコマース・プロフェッショナル」の認定証が与えられる。
上記以外にも、中国のネット市場の分析や、中華圏の人びとの購買心理行動の理解にも役立つ内容になるという。アリババが提供する講座となれば、Eコマース市場の最新のノウハウを得られる好機として受講者からの期待も高まるだろう。
アリババ・ビジネス・カレッジはもともと、2008年にアリババ本社がある中国・杭州で始まったものだ。海外で初開講国としてシンガポールが選ばれた背景には、世界で最も急成長する東南アジアの市場を押さえたい同社の考えがある。
6億人あまりいる人びとの多くがオンラインショッピングに慣れ親しむ同地域では、2020年までにEコマース市場が250億米ドル(約2兆8000億円)規模にまで成長する見通し(マーケティング調査会社 Frost&Sullivan社調べ)。
しかし、同地域は米アマゾンや中国のライバル企業であるJDドットコムも狙う市場。Eコマースなどデジタルビジネスに関する知識やノウハウへの需要が高まる中、7月にシンガポールに進出したアマゾンもアリババ・ビジネス・カレッジと同じく、Eコマースに特化した講座をシンガポールで開講予定だ。
アリババ・ビジネス・カレッジは、シンガポールを東南アジアのデジタルハブに押し上げることを目的に掲げる。東南アジアのハブ都市であるシンガポールで既存・潜在顧客への対応を手厚くし、またEコマース人材を育成することで、同地域における競合に対するプレゼンスを高める狙いがある。
アリババ・ビジネス・カレッジの東南アジア地域担当のNick Zhou氏は、現地紙ストレーツ・タイムズの取材に対し、「誰もがジャック・マーに憧れている。しかしわれわれは、第二のジャック・マーを生み出すのではなく、シンガポール人独自のサクセスストーリーの誕生に貢献したい」と話す。
アリババは今後、中国の広域経済圏構想「一帯一路」の下で提携するシンガポール以外の国々でも同カレッジを提供していく構えだ。
(編集協力:Livit岡徳之)
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」