シャープが東証一部へ復帰--戴社長1人体制から共同CEO体制へ

 シャープは12月7日に、東京証券取引所市場第一部銘柄に再指定され、「一部復帰」を果たした。

 同社は、2015年度通期連結業績で、430億円の債務超過に陥ったことで、2016年8月1日に、市場第一部から市場第二部へと指定替えになっていたが、鴻海精密工業傘下で業績を改善。2016年度連結業績においては3期ぶりの営業黒字を達成。2017年度上期においては、四半期純利益がリーマンショック以前の水準にまで回復するとともに、2017年度業績見通しを上方修正している。2017年6月30日には、市場第一部銘柄への指定申請を行なっていた。


シャープの代表取締役社長の戴正呉氏

記念撮影を行うシャープの戴社長と東京証券取引所の小沼泰之常務執行役員

シャープに贈呈された上場通知書

 シャープの代表取締役社長の戴正呉氏は、「2016年8月、シャープの東証一部復帰を果たすという強い決意をし、片道の切符を買って、楽曲の『One Way Ticket』と同じ気持ちで、日本にきて、シャープの社長に就任した。本日、ようやくこの目標を果たすことができた。みなさんのおかげである」と感謝の言葉を述べた。

 その一方、「中期経営計画の達成は私の使命であり、この責任を一身に背負い、最終年度となる2019年度まで全力をあげて取り組む覚悟である。だが、2018年度以降の経営体制については、取締役会ならびに次期株主総会に判断を委ねる。私はもう67歳。東証一部復帰という目標を達成したら辞めたいという気持ちがもともとあった。それは今も変わっていない。そこで、取締役会にかけたが、業績が成長し、年度途中で社長交代をすることは異例であると言われたことに加え、社長は株主総会で選出された取締役から選出することが通例であることから、社長退任の話は保留になった。個人のわがままでは決められない。本当は辞めたい。ただし、次期社長育成のため、今後、共同CEO体制へと移行し、決裁権限の委譲を検討する。取締役会議長、経営戦略会議議長、オペレーション決裁のすべてを社長1人で行っていたが、オペレーション決裁は新社長に任せる。共同CEOに選出する人は、社内社外を問わず、いい人材が条件である。早急に検討したい」とした。

 さらに、スマホ向け有機ELディスプレイのサンプル出荷を開始したことに触れる一方、「有機ELでサムスンと戦うことにはあまり興味がない。サムスンは横綱であり、シャープは自分でできるところやり、そこから事業を拡大したい。シャープは、東証一部上場企業として投資を継続していく。そして、東証一部上場企業として、日本の社会に対して責任がある。私は、2016年8月に社長に就任してから発表した『日の丸連合』を創生すべきとの考え方に変わりはない。液晶ディスプレイ産業を日本に残すのか、残さないのか。これから経済産業省と産業革新機構に相談したい」などとした。

シャープ復活で1人あたりの年間平均給与は1.17倍に

 また「今後は、商品の独創性、革新的なデバイスの創出といった、当社の強みを活かしつつ、チャレンジする企業文化を醸成し、『人に寄り添うIoT』、『8Kエコシステム』の実現に向けたトランスフォーメーションを進めることにより飛躍的成長を果たす。まずは、中期経営計画は『有言実現』したい」と述べた。

 会見では、「シャープ復活」と題したスライドを示し、東証二部指定替え時(2016年度上期)には、売上高が9196億円であったものが、現在(2017年度上期)には1.21倍となる1兆1151億円、当期純利益は454億円の赤字から、347億円の黒字になったことのほか、設備投資額は、274億円から732億円と2.67倍に、新卒採用は142人から312人へと2.20倍に、1人あたりの年間平均給与は1.17倍に増加したことなどを示した。

 さらに、東証一部復帰記念として、社員に対して、「感謝のしるし」を用意し、家族や友人ヘのプレゼントや懇親会費用などに使ってほしいとしたほか、消費者向けキャンペーンとして、12月1日から開始しているシャープ8K誕生祭」に加えて、新たに「シャープ白物家電60周年感謝祭」を実施することを発表。「東証一部に復帰したことにあわせて、シャープを応援してくれた人たちに感謝するものである」とした。


会見場には全員が8Kの赤い帽子をかぶって登場

 同日午前11時30分から東京証券取引所で行われたセレモニーでは、上場通知書が東京証券取引所 取締役常務執行役員の小沼泰之氏から贈呈され、戴社長が最初の打鐘を行い、その後同社の役員が2人1組になって、合計で5回打鐘した。

 

 会見では「会社の将来は大切である。だから二部ではなく、一部復帰を目指した。これからのシャープには人材が重要であり、そこに投資をしていくには、一部復帰が必要であった。また、これから100年のシャープを考えると、一部復帰は通過点である。今朝、経営幹部に対してもこれは通過点であり、これからもがんばってほしいとお願いした。私は日本人ではない。だが、多くの人が応援してくれたこと、全員一丸となってがんばってきた結果が、今日につながっている。シャープはもともと実力がある会社であり、金脈と同じ。これまでは経営者は外から入ってこなかった。私は、金脈を掘る役割を行ってきた。これからも金脈を掘りたい」と語った。

 また「私はシャープの工場の改革に一生懸命取り組んだ。亀山工場で生産する液晶ディスプレイは、スマホ向けは30%としており、さまざまな領域に活用できる、健全な体質にした。他社は8割以上がスマホ向けとなっているのとは違う」などと語った。


役員全員で写真撮影を行った

セレモニーが終わって退場するシャープの役員

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