KDDI、「スマートドローン」で総距離約6.3kmの完全自律飛行に成功

 KDDIは11月29日、新潟県長岡市の協力のもと、4G LTEのモバイル通信ネットワークを活用し、「3次元地図」「ドローンポート」を用いた「スマートドローン」の完全自律飛行実験を実施したと発表した。実験の結果、離陸地点から、自動充電可能な「ドローンポート」を経由し、錦鯉を養殖する棚池での薬剤散布後に着陸地点に帰還するまでの総距離約6.3kmの長距離飛行に世界で初めて成功したという。


 同社は、モバイル通信ネットワークを活用した、スマートドローンによる安全な長距離自律飛行が可能となるインフラの構築を目指しており、同実証実験は、そのために必要な「3次元地図」による安全な飛行高度の設定と、「ドローンポート」による自動充電に関するものだという。今回、それらの活用により、ドローンの長距離自律飛行が技術的に可能であることを確認した。

 同実証実験で用いた「3次元地図」は、モバイル通信ネットワークを活用した安全なドローン飛行を実現する「スマートドローンプラットフォーム」の開発について業務提携したゼンリン、テラドローンと共同で開発。ドローンの自律飛行に「3次元地図」を用いることで、安全な飛行高度を自動設定でき、山や丘など地形の高度差や、ビルなどの障害物を把握可能としている。今回の実験では、100m以上の高低差の自動判別に成功した。


 また、同実証実験で用いた「ドローンポート」では、プロドローンが開発した画像認識による自動着陸機能により、目的の場所に正確に着陸。自動で充電を開始する。これにより、ドローンポートを介しての長距離飛行が可能となった。

 同実証実験を行った新潟県長岡市山古志は、錦鯉発祥の地であり日本有数の錦鯉養鯉地であり、こまめな給餌や寄生虫除去のための薬剤散布、いけすの管理や保守など、手間がかかっているという。特に、美しく大きな錦鯉を育成するために欠かせない寄生虫除去の薬剤散布は、棚池をボートで満遍なく移動しながら散布するため、時間と労力に課題があった。

 同社によると、モバイル通信ネットワークと「3次元地図」を用いた長距離自律飛行が可能なスマートドローンにより、散布場所を設定するだけで、高度を自動設定し、効率的な農薬散布が可能になったという。


 今後、同技術を用い、モバイル通信ネットワークを活用したスマートドローンの長距離自律飛行インフラが整理されれば、農地監視や農薬散布などの農業分野だけではなく、地形や設備の測量、施設の警備、災害状況の把握、遠隔地への配送など、さまざまな分野での活用が期待できる。

鉄道災害時の異常検知に向けた実証実験も

 また同日、近畿日本鉄道、キヤノンマーケティングジャパンと2018年2月より、自律飛行するスマートドローンを活用した鉄道災害時における線路・送電設備の異常検知の迅速な情報収集に関する実証実験の開始を発表している。

 KDDIは、ドローンのLTE通信モジュールと運航管理システムを提供。キヤノンマーケティングジャパンは、ドローンに搭載したカメラを遠隔から制御する仕組みや長時間の飛行を実現したドローンを提供する。

 現在、鉄道設備の状況把握は、専用車両の走行による点検や、徒歩巡回による目視点検などが主な手法となっており、迅速な被害状況の把握や効率的な復旧作業が求められている。

 そこで、4G LTEのモバイルネットワークにつながることで広範囲かつ長距離の飛行が可能になったスマートドローンに、高精細な映像を撮影できるキヤノン製カメラを搭載。近畿日本鉄道の車庫において、さまざまな環境や状況を想定しての飛行や動作を検証することで、ドローンによる遠隔での効率的かつ安全な設備点検の実現を目指す。

 なお、同実証実験は、2017年10月に提供開始した「KDDI IoTクラウド ドローンパッケージ」の通信モジュールおよび、運航管理システムを活用した第一号の事例になるという。

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