USCのInteraction Labは、こうした社会支援ロボット、つまり物理的な手段ではなく、社会的な手段で人々をサポートするロボットに向けたソフトウェアの開発に注力している。同ラボのディレクターでもあるMataric氏は、脳卒中や外傷性脳損傷から回復した人や、アルツハイマー病患者へのロボット支援治療も研究している。ロボットであれば、24時間365日無休の介護も可能だからだ。
Mataric氏は、2年ほど前にEmbodiedというスタートアップ企業を立ち上げ、こうしたテクノロジの商用化に着手している。
Mataric氏のラボで開発されているソフトウェアは、医療の現場でも研究されている。ロサンゼルス小児病院(CHLA)の小児科医であり、USCのケック医学校で臨床小児科学の助教授を務めるMargaret Trost博士は、Mataric氏の下で学んだ大学院生の1人と協力して、社会支援ロボットをCHLAに導入しているところだ。
「小児科病院を楽しいところにしようと、いろいろと工夫はこらしているが、入院している子どもたちが乗り越えなければならないトラウマは、並大抵のものではない」(Trost氏)
Trost氏が特に注目しているのは、ロボット開発企業のHello Roboが3Dプリンタで製作した「MAKI」の活用だ。同氏のプロジェクトでは、点滴挿入時の痛みや不安を緩和することを目指し、話したりゲームをしたりするようプログラミングしたMAKIを利用している。
あるランダム化比較試験では、MAKI(同プロジェクトでは「IVEY」と名付けている)を2つの目的に活用している。1つは、単なる娯楽としての使い方だ。小児患者は、タブレットに現れるIVEYの絵を使って、着せ替え遊びができる。選んだ衣装に応じて、IVEYが「カウボーイになったぞ」などとしゃべってくれる。
もう1つの使い方は、タブレットのゲームを使って、チャイルドライフスペシャリスト(病院で子どもへの心理的支援を提供する専門職)がやることをまね、点滴挿入への心の準備をさせる工夫だ。例えば、自分の腕に包帯が巻かれるのを嫌がらないように、子どもが何かに包帯を巻くゲームがある。また、家族や医師、さらにIVEY自身など、いろいろな人物の画像が表示されるゲームもある。子どもが画像をタップすると、その人が身近でどんな支えになってくれるのか、教えてくれるのだ。
研究は今も継続中だが、初期のデータだけでも有望な結果が表れている。
「ロボットが無かったときに比べて、ロボットの導入が良い影響をもたらしていることは間違いない。その影響の大きさについては、統計と研究の完成による裏付けが必要だが」。Trost博士はそう語っている。
社会支援ロボットが人間の職を奪うという懸念は、間違っている、とMataric氏は話す。
「人間の介護者に置き換えようという意図は、まったくない」、とMataric氏は述べ、ロボットはあくまでも有資格作業者の不足を補うのが目的だと指摘している。
これには、Parker氏の言葉も符合する。7年前、同氏は息子のLogan君が腎臓摘出の手術後、1人で病院のベッドに寝ている姿を目にした。当時14歳だったLogan君は、珍しい種類の腎臓がんを患っていたが、なぐさめたり一緒にいたりしてくれるBoo Booのような存在はいなかったのだ。
この経験から、自分の息子のような小児患者に友だちを作ってあげたい、とParker氏は考えるようになったのだという。Logan君は、この後、がんを克服している。
「Boo Booがいたら、Loganにもずいぶん救いになったはずだ。他の子どもにとっても救いになってほしい」(Parker氏)
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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