Deblieck氏とGoffin氏はベルギーの老人ホームにも進出した。そこではZoraは理学療法士の役割を果たし、患者に動き方を示した。その間、人間の理学療法士は自由に歩き回り、患者が適切にエクササイズできるように手助けすることができた。
「われわれは過去にスクリーン、さらにはスクリーン上のロボットを使ってテストを実施したことがあるが、誰も興味を持ってくれなかった。だが、Zoraソリューションが登場した瞬間から、患者たちが動き始めるのが分かった」(Deblieck氏)
Zoraが果たすことのできる最も重要な役割は、ひょっとしたら、その存在自体なのかもしれない。
「ロボットがいつも近くにいてくれるというだけで、孤独が和らぐ」(Deblieck氏)
同氏は、Zoraが老人ホームにもたらした興奮を、子どもたちがホームを訪問したときになぞらえる。少しの間、入居者たちは心配事や痛みを忘れて、ちょっとした楽しい時間を過ごすことができる。
Zoraは顔認識技術を利用するのではなく、QRコードが印刷されたバッジをスキャンして、相手を識別する。Deblieck氏によると、顔認識技術はまだ100%の精度を保証できないという。病院という環境では、精度の高さは特に重要だ。そのため、医療従事者が一連のエクササイズをプログラムするときには、必要なQRコードにリンクされる。
子どもたちは、テクノロジを通り越して、ロボットを仲のよい相棒として見ている。彼らはBoo Booがあたかも自分たちの仲間であるかのように接する、とParker氏は語る。
「子どもたちは実際に、Boo Booが自分と同じ年代の友達であるかのように感じている。彼らはそのように説明してくれた。『Boo Booは血を採られるのがどんな気分なのかを分かっている』と彼らは言う」(Parker氏)
そのような共感能力は、病院以外でも役に立つかもしれない。南カリフォルニア大学(USC)のロボット工学および自律システムセンターの創設ディレクターであるMaja Mataric氏は、自閉症スペクトラムがある子どもたちの対人関係スキルを高めるため、そうした子どもたち向けのロボット支援療法の開発に取り組んでいる。
Mataric氏によると、ロボットは多くの場合に、子どもが他の人間には見せない行動を引き出すことができるという。例えば、笑顔を見せる、自分から遊びを始める、いつもよりよくしゃべる、といった行動だ。子どもたちは、いつもは言わないような、共感を示す言葉も口にする。
「子どもたちはロボットに向かって、『これこれをやってほしい』と言うが、ロボットはそれをやってくれない。プログラムされたことしかできないからだ。そうすると、その子どもは、『そうか。自分が先生に言われたことをやらないとき、先生がどんな気持ちになるかが分かった』と言う」(Mataric氏)
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