店舗に行くと、入口で高さおよそ2mほどのデジタルサイネージが出迎えてくれます。一見どこにでもあるデジタルサイネージなのですが、実はこの次世代型デジタルサイネージは顧客が実際に画面をタッチして、人気商品やクーポン情報などさまざまなコンテンツを楽しむことができるインタラクティブコミュニケーション型となっています。
では、なぜこのような施策を導入したのでしょうか。
背景にはデジタル化によって、従来の紙の印刷物よりも更新頻度を増やし、「消費者により早く新しい商品情報を提供したい」という狙いと、同時に紙の廃棄物を減らし、コストダウンの効果も狙っています。デジタルサイネージにすることで、消費者に広告のインパクトを与え、入店・購入に導く効果を期待しています。
さらには、データ分析から消費者の使用状況を把握し、販売戦略の立案に役立てたり、地域ごとに地域性のある内容を提供することで、来店客数増加、購買率アップにつなげます。
一方で課題もあります。新商品やお得商品の情報やクーポンなど便利なコンテンツをいくら取り揃えても、顧客が触ってくれなければ意味がありません。まずは、”触れる”サイネージであることを認識してもらうため、顧客の注意を引く工夫を取り入れています。
一つ目は、kinectを利用し、センサが人を感知すると画面内容が切り替わるというもの。人が近づくと画面が切り替わるので、思わず立ち止まる人が多いのです。そして、二つ目はクーポンのダウンロード機能です。中国では日本よりもはるかに電子決済が普及しているので、クーポン情報を電子化し、QRコードでダウンロードできるようにすることで、支払までの導線をスムーズにするなど、顧客の立場に立って設計しています。
このほかにも、より商品を選びやすくするための“着こなし情報”を毎週更新するなど情報の鮮度にも注意を払い、常に新しいワクワク感を提供しています。また、弊社が担当している管理システムでは、リアルタイムでサイネージの利用者数、各コンテンツのタッチ人数、回数、CTR、平均使用時間などを確認できます。
さらには、来店客数、購入人数、購買変換率までデジタル管理しています。店舗単位で管理しているため、データから各店舗のその日の利用状況と、ハードウエアやソフトウエアの異常発生を遠隔システムで確認できるので各店舗の運営改善などにも役立てています。
このように、各コンテンツの利用状況を細くデータ分析することで、消費者の関心が高い内容、改善点などを明確に把握し、コンテンツやレイアウトなどの調整も逐一実施しているのです。
前例がなく試行錯誤でスタートした部分もありますが、触れるデジタルサイネージという新しい挑戦は、確実に中国の消費者に受け入れられており、現在は中国国内で100店舗が導入しています。そして、今後さらに拡大していく方向性で、準備に取りかかっています。
今後、時間をかけて人々に習慣を身に着けてもらい、来店することを楽しく感じてもらえるような体験をサポートしていきたいと考えています。中国にお越しの際、もしユニクロでこのデジタルサイネージを見かけたら、ぜひ実際に体験してみてください。みなさんの感想を楽しみにしています。
近衛元博
D2C China代表取締役
慶應義塾大学 経済学部卒業。2001年ウェブデザイナーとしてキャリアをスタート。ディーツー コミュニケーションズ(現D2C)入社後、2006年より株式会社電通に出向し、その後5年間、電通のデジタル・ビジネス局にてモバイル領域のプランニング並びにサイト制作を手がけ、多数の大型クライアントのキャンペーン設計に携わる。2011年8月、迪尓希(上海)広告有限公司(D2C China)設立に伴い、同社の総経理(CEO)に就任。中国において、デジタルを活用したキャンペーンを精力的に手掛ける。2016年、中国で最も権威と影響力のある「中国国際広告祭」の「中国広告長城賞- インタラクティブ・クリエイティブアワード」でグランプリを獲得。
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