――すべての機器を自社で開発されているとのことですが。
現在複数の機器をWi-FiとBluetoothで接続しています。ひと言にワイヤレス通信といっても電波干渉があったり、1台つなぐと別の1台が切れてしまったりと、すべてをつなげて使うのは簡単ではなく、その解決のために自社開発しています。
賃貸住宅キットは、複数の機器が同時に動いて初めてメリットがあるので、すべてをゲートウェイにつなげるまでに4カ月くらいかかりました。
今は、バッテリの消耗について研究開発を進めていて、人間が発生する力を利用して発電する仕組みを考えています。例えばドアの開閉が動力になって、スマートロックを動かすなど、電池と人間による動力のハイブリッドで動かせるようにしていきたいと考えています。
現在でも、機器によっては常時接続をしないなど、十分に電池消費は押さえていますが、さらに抑えられる仕組みを考えていく必要があります。
スマートハウス対応機器は、昨今各社から発売されていますが、賃貸住宅キットの強みは、IoT機器を不動産セクターの企業が作ったことだと思っています。不動産をわかっているからこそ、どう活用すればいいのかがわかる。その強みを十分にいかしながら、IoT機器の開発や改良に取り組んでいきます。
――各機器の接続性の良さや、電池消費などが他社のスマートハウスとの違いになりますか。
それらも差別化の1つですが、圧倒的な差別化としての取り組みは、IoT機器向け無線通信技術であるLPWA(Low Power Wide Area)を利用した環境センサによるデータ収集です。実証実験の段階ですが、宅配ボックスの中にLPWAと環境センサを搭載し、温度、湿度、照度、振動などを計測し、現在データを収集しています。
これらのデータをロボットホームでは、家賃の推定に利用していこうと考えています。現在でも「家賃推定エンジン」を提供していていますが、その精度をさらに上げるためにLPWAを活用します。
アパートの家賃は、立地と面積の2つによって決定されるケースがほとんどでしたが、今回の実証実験では、周囲の騒音や振動、PM2.5の数値など、住まいを取り巻く環境が数値でわかるようになります。例えば国道から近いといっても、振動の強弱や音の大小によって、住み心地はかなり変わります。そうしたことを加味することで、家賃の適正価格を出していこうという試みです。
この環境データに周辺の病院や学校などの施設情報、さらに災害情報などのオープンデータを組み合わせることで、今までにはできなかった家賃の理由付けができるようになります。
賃貸住宅キットを導入すると、今後オーナーはどんな属性の人が住んでいるのか、どんな人が入居の可能性が高いのか、内見にはどんな人が来ているのかというデータまで見られるようになります。
今までは、空室の期間が長くなってしまったので家賃を下げていたオーナーの方も多かったと思いますが、その値下げは本当に必要かどうかを見極められるようになります。
――更新時期がきたから、家賃を上げる、下げるといった形ではなくなりますか。
時期的な要因ではなくて証拠があった上で家賃を決めることが可能になります。インベスターズクラウドが扱っているのは投資物件になりますから、きちんとした根拠を元に算定した方が安心感もあります。
不動産は人間の知見が頼る部分が多くて、知見が多い人ほど有利という状況になってしまいがちです。その部分をITに置き換えることで、不動産業界を変えていきたいと思っています。
不動産関連会社が抱えるデータと居住者における情報の非対称性、業務の効率化、ユーザーに対する付加価値情報の提供。この3つはITによって大きく変わることができる分野だと思っていますので、ここにメスを入れていきたいですね。
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