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拡大するヘルステック市場、日米で異なる特徴と課題--メドピアに聞く

井口裕右 別井貴志 (編集部)2017年11月08日 08時00分
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 ヘルステックベンチャーのメドピアは12月5~6日、医療・ヘルスケア分野における最新テクノロジとそれを活用した国内外の先進事例を紹介するイベント「Health 2.0 Asia - Japan 2017」を東京都内で開催する。

 このイベントは2007年に米国カリフォルニアで始まり、日本では3度目の開催となる。ステージでは日本や米国のヘルステック動向、政府によるベンチャー支援施策、VRやロボティクスといった最新テクノロジの可能性、そして具体的な疾患や健康課題の解決にヘルステックがどのように挑むかなどのテーマについて講演やパネルディスカッションが行われる予定だ。

 また、同イベントではヘルステックビジネスに携わるスタートアップ企業を対象としたピッチコンテストを開催。審査員には大手製薬会社バイエルでデジタルヘルス・イノベーション部門の国際統括を務めるEugene Borukhovich氏、日本生命保険相互会社の取締役執行役員である田中聡氏、ハーツユナイテッドグループの代表取締役社長CEOである玉塚元一氏など8名が参加するほか、会場参加者によるライブ投票なども行われる。エントリは11月10日まで募集している。

 今回、「Health 2.0 Asia - Japan 2017」ではどのようなトピックスが話題になるのか、また本場米国のヘルステック動向、そしてピッチコンテストの狙いなどについて、メドピアの代表取締役社長 CEOである石見陽氏と、カンファレンスの統括ディレクターを務める上田悠理氏に話を聞いた。

「Health 2.0 Asia - Japan 2017」のディレクターを務める上田悠理氏(左)とメドピアの代表取締役社長 CEOである石見陽氏(右)
「Health 2.0 Asia - Japan 2017」のディレクターを務める上田悠理氏(左)とメドピアの代表取締役社長 CEOである石見陽氏(右)

ヘルステックは「BtoC」から「BtoB」へ

--2007年から米国で開催されている「Health 2.0」ですが、ヘルステックの動向にどのような移り変わりを感じますか。

石見氏:10月の米国開催で感じたのは、話題の中心がBtoCのビジネスからBtoBやBtoBtoCへと移行していることですね。ビジネスの対象としているのは病院や保険会社がほとんどで、以前はゲーミフィケーションなどを通じて日常のヘルスケアや予防医療への投資を促す個人向けのビジネスが多かったのですが、より組織、企業へとビジネスの対象がシフトしている印象が強い。

 また、日本におけるメドピアのビジネスは製薬企業が多くの割合を占めるのですが、今回米国では大手企業の割合が薄まった印象があります。過去にはスポンサーや参加者は製薬企業などの大手が非常に多かったのですが、最近はスタートアップの割合が増えている傾向にあるようです。

--大手企業の割合が減少している背景には、どのような動きがあるのでしょうか。

上田氏:その背景には資金調達に成功したスタートアップ企業の成功事例が増えてきているというのがあり、データセキュリティなどヘルステックを支えるテクノロジ企業のプレゼンスが高まってきたというのが大きいのではないでしょうか。また、こうしたスタートアップ企業が新たにスポンサーやスピーカーとしてイベントに参加するという動きも見られます。大手企業がこうした勢いのあるスタートアップ企業に道を譲っているということもあるのかもしれませんね。

 いま、ヘルステックは蓄積されたデータをどのように解析して新たなソリューションを生み出していくかというステージにあると思います。その上で、ガイドラインの整備やブロックチェーン技術の活用といった医療情報の相互利用のための情報セキュリティ、AI、機械学習、VR、音声認識といった先端技術の活用、Amazon、Intel、Google、Microsoftなどヘルスケア参入企業の増加、そして個人向け、法人向けを問わずビジネスモデルの乱立・錯綜が生じている点、ヘルステックの裾野の広がりといった点が2017年のトレンドとして挙がっています。

「米国では『データからの気付きがどのようなバリューに結びつくのか』という具体的なリターンが問われる」──と上田氏
「米国では『データからの気付きがどのようなバリューに結びつくのか』という具体的なリターンが問われる」──と上田氏

石見氏:展示ブースでもこれまでは個人向けヘルスケア端末やロボットなどの展示が多かったのですが、2017年は業務基幹系のシステムや情報セキュリティのソリューションなど企業向け製品の展示が多くありました。

ヘルステックは、どう生活者の行動変容を生み出せるか

--日本と比較して、米国のヘルステックはどのような点が先進的だと感じますか。

上田氏:日本でよく見られるヘルステックのサービスや製品で言われる「エビデンス・ベースド・ケアに則って作られている」という言い方は米国では常識となっていて、次の段階である「バリュー・ベースド・ケア」がひとつのキーワードになっているのではないでしょうか。ここで言う「バリュー」とは“このアプリやサービスを使うことで実際にどれだけ医療費を削減することができるのか”という具体的な利用者の利益を指します。

 例えば、ビッグデータの活用を挙げると、これまではさまざまなデータを解析して「こんなことがわかった」という段階で喜べたのですが、今の段階では「この気付きがどのようなバリューに結びつくのか」というビッグデータによる具体的なリターンが問われるようになっているのです。こうしたバリュー・ベースド・ケアの考え方は日本でも企業や行政からの関心が高まっていますが、まだ概念を議論している段階ではないでしょうか。

--米国は日本よりデータ連携が進んでいると思うので、ビッグデータを活用すればバリューを生み出す仕組みは生み出せそうですね。

上田氏:確かにできそうなのですが、もうひとつの課題には“デザイン志向”というものが挙がっています。ビッグデータを解析して製品やサービスに落とし込み、利用者にヘルスケアを促していくという一連の流れを作っても、実際には利用者が有益に利用してくれない=行動変容につながらないという場合も多いわけですね。“いい製品やサービスを作れば売れる”と考えて作られていたところが実際には効果を生み出していないというのも課題に挙がっています。行動に移したくなる魅力的なユーザー体験をデザインする必要があるのです。

--マーケティングの動向に非常に似ていますね。マーケティングでもビッグデータによって顧客のインサイトがわかったという段階から、どうしたら顧客行動に影響を与えられる顧客体験を生み出すかという段階に移行している。

上田氏:まさしく、インサイトが理解できた段階から行動変容をどう生み出せるかを考える段階に来ていると思います。ヘルステックの本質的なバリューに近づいているのではないでしょうか。

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