――不動産業界のIT化を進める上で足りない部分はどこだと考えますか。
足りない部分を私が語るのは少し難しいですね。ただ、不動産業界が大きく変わったと思うのは「LIFULL HOME’S」「SUUMO」が登場した時です。この2つのサービスで住所の枝番まで表示されるようになり、入居希望者がより詳細な情報を入手できるようになりました。これにより、仲介会社の体質は大きく変化して、おとり物件を使ったりするような透明化できない会社は自然に淘汰される流れが生まれてきたと思います。
透明性を高めることで競争優位性が生まれ、淘汰が生まれるのは管理会社も一緒だと思っています。そこで残った会社はちゃんとオーナーに選ばれる会社になる。やることをきちんとやっている誠実な会社が市場に残れる仕組みができてくると思います。
ダイヤモンドテールを導入した管理会社が、問い合わせが約5倍に増えて、そのためADを削減して、直営店の店舗を2店舗増やしたという、成功事例がありました。やることをやれば、きちんと選ばれる会社になる。そういう業界にしていきたいです。
ただ、私たちの提供するサービスはすぐに結果が出るものではないので、時間はかかります。ベンチャーキャピタルから資金調達した会社だと時間軸が合わなくて、うまくいかなかったでしょう。ダイヤモンドメディアは自己資本なので、時間がかかっても「しょうがないからやるか」って開き直っています(笑)。
――“オーナー”という切り口から不動産業界を変えていくダイヤモンドメディアの今後の展開を教えてください。
私たちはオーナーは不動産流通業界の中の“ブルーオーシャン”だと思っていて、どこの会社もまだリーチできていない分野なんですね。ですので、今後はこの分野により一層力を入れていきたいと考えています。具体的には、オーナーが意思決定する時の判断基準や収支の情報、資産の活用の仕方を提供していきたい。それを弊社だけで提供するのではなくて、オーナーと強いつながりを持っている管理会社とパートナーシップを組むことで、多くのオーナーにリーチすると同時に広い選択肢からオーナーに適切な提案をできるようにしていきたいと思っています。
それをオーナーにダイレクトに提供するのではなくて、オーナーと一番つながりを持っている管理会社を経由することで、最も多くのリーチを実現していこうと思っています。
実は日本の賃貸経営はかなり成熟していて、ここまでしっかり管理業務ができているのは世界でも珍しいんです。将来的にはこのシステムを世界に輸出していくことも視野に入れています。現時点でも海外から視察が来るなど、日本の賃貸管理業務は注目されています。売買のシステムを整えている国は多いですが、賃貸は意外と手付かずの部分が多い。日本から輸出する産業の一つに賃貸管理業務がなれればいいなと思っています。
森ビルJリートの投資開発部長として不動産売買とIR業務を統括するとともに、地方拠点JリートのIPOに参画。再生エネ業界においては、太陽光パネルメーカーCFOや三菱商事合弁の太陽光発電運用会社の代表取締役社長CEOを歴任。政治学修士、経営学修士、コロンビア大学とニューヨーク大学にて客員研究員。
IT業界の経験に裏打ちされた視点と、経営の視点の両面から、ITやテクロノジーを軸とした事業戦略立案や新規ビジネス開発、アライアンス支援を得意とする。近年は特にX-Tech(不動産テック)やロボット、AIなど最新テクノロジー分野を中心に手掛ける。経営学修士(専門職)。
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