――すべてのシステムがオーナー向けに作られていますね。
ダイヤモンドメディアは「賃貸住宅フェア」に出展しているんですが、ブースにオーナーの方が来てくださると、自分の物件の反響がわからない、賃貸経営がうまくいっているのかいないのかわからないと、話される方がとても多いんですね。
なぜその部分がオーナーに伝わらないかというと、管理会社側に情報を明らかにするメリットが少ないからなんです。その部分を透明化したほうがメリットが出るという座組みができれば、情報開示にも躊躇がなくなるはずです。
今までブラックボックスだった部分を透明化することで、管理会社とオーナーの双方にメリットが生まれる状態を作るのが、Centrl LMSとOwnerBoxです。導入すれば、管理会社自身のセールスマーケティングの業務改善にもなり、さらにオーナーに対して客観的なデータを提示できる。オーナーは収支の管理もできる。管理会社とオーナーのお互いのメリットを明確に打ち出すことで、透明化の仕組みは作れると思いました。
――管理会社とオーナーをつなげる仕組みは、オーナーに多くの情報を提供できるという面からも意味がありますね。
Centrl LMSとOwnerBoxは、管理会社がオーナーに対する説明責任を果たすためのサービスだと思っています。私は不動産は投資ではなく、賃貸「経営」だと思っていて、オーナーは経営者です。賃料をどうするか、初期費用の設定をどうするか、リフォームするかしないかなどは、全て経営判断。経営者であるオーナーは投資回収に何年かかるのか、賃料を下げるとどのくらい損失が出るのかは、常に考えていなければなりません。
オーナーが意思決定するには、判断材料が必要で、その情報には正しさと透明性が求められます。例えば1棟30部屋など複数の不動産を持つオーナーには、月に一度まとまった額が入金されますから、空室が続くと「ひと部屋、月額1000円くらいなら下げてもいいかな」などと思いがちですが、家賃が10万円の物件であれば、資産価値が1%減ってしまう。本当は一部屋の稼働率がどのくらいで、売上とコストを見ながら、もっと言うと出口戦略も見定めながら賃料を決めていくべきです。
不動産業界では、売り手と買い手の間に情報格差があると言われていますが、管理会社とオーナーの間にも情報格差があって、その格差の方がむしろ大きいと感じています。今まで得ることができなかった情報を、あの手この手でオーナーの方々へ届けたいと思っています。
――大手を中心に販売されているんですか。
現時点では、販売数量をものすごく伸ばすというよりも、このメリットを理解してくださる会社の方に、大事に売っていこうというフェーズだと思っています。実は、ダイヤモンドメディアは営業機能をほとんど持っていなくて、紹介や問い合わせなど、口コミでの導入がほとんどです。
マーケティング用途の不動産システムは、大手IT企業が参入したこともありましたが、すぐに撤退していて、なかなか根付くことが難しいマーケットです。その中で私たちが選ばれていくためには、高付加価値のサービスを作り、1つではなく複数のサービスで多面的に展開することで持続性と収益性の両面を確立していくことが必要だと考えています。
――競合他社の動向は気になりませんか。
あまり気になりませんね。例えば弊社のサービスのどこか一部を真似しようとしても、それだけだと採算がとれません。今私たちが展開しているサービスを総合的に提供することに意味がありますし、どのサービスも専門的かつニッチなために、既存のマーケット自体が存在しません。そのため他社の参入は難しいと思います。
弊社のサービスはどれも独自性が強く、ほかの不動産系IT企業との住み分けが図られているので、物件データを持っているシステム会社とパートナーシップを組むことができます。パートナー企業の持つ物件データと弊社の持つマーケティングデータや収支のデータなどを紐付けることで新たな情報の価値を生み出しているのが強みだと思っています。こういった他企業との関係性も参入障壁を高くしている要因の一つだと思います。
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