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三井不動産がマルチの体制で取り組む「10年で結果を出す」ベンチャー支援の形

加納恵 (編集部)2017年10月24日 10時48分
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 大企業とベンチャーの協業が進む中、三井不動産はマルチな体制でベンチャーを支援している。東京・日本橋にコワーキングスペース「31VENTURES Clipニホンバシ」を構える一方、10月26~27日には6年目を迎えるイベント「ASIAN ENTREPRENEURSHIP AWARD(AEA)」を開催する。

 2015年に「ベンチャー共創事業部」を立ち上げ、ベンチャー支援に取り組む三井不動産ベンチャー共創事業部事業グループ長の松井健氏に、支援する意義から、関わり方、同社ならではの強みについて聞いた。

三井不動産ベンチャー共創事業部事業グループ長の松井健氏
三井不動産ベンチャー共創事業部事業グループ長の松井健氏

 三井不動産がベンチャーの支援に本格的に乗り出したのは2015年。ベンチャー共創事業部を設置し、「コミュニティ」「支援」「資金」と総合的に支援する体制を整えた。

 「立ち上げのきっかけは、三井不動産の本業をもっと強化したいという思い。不動産業をこのまま続けても、業態が変わらなければ、現状維持が精一杯で、この先広げていくことは難しいという問題意識が社内にあった。一方で、ベンチャー企業は技術やサービスに特化しており、とてもいいものを提供している。そうした“いいもの”を私たちが提供するオフィスビルや住宅に取り込み、顧客満足度のアップにつなげたいと考えたのが1点。もう1つは不動産業にこだわらない新しい事業を立ち上げたかった」と松井氏は話す。

 出資した「クリューシステムズ」はクラウド型映像監視事業などを手がける企業。出資するだけでなく、すでに三井不動産からの出向者もいる状況だ。「将来的には当社として新しい事業部ができてもいいのではないか、くらいの意気込みで取り組んでいる」(松井氏)という。

 三井不動産がベンチャー支援として用意しているのは、「31VENTURESクラブ」に代表されるコミュニティ、独自の資金を提供するファンド、サービスや技術を試験導入できる実証実験の場などの三井不動産がもつアセット、リソースの3つ。「これら支援すべてを提供できている企業はまだない。投資だけを求めている人もいるし、オフィスだけが欲しいという人もいる。そうしたさまざまなニーズに応えられる」と充実した体制を強調する。

 現在コワーキングスペースの会員数は約400名程度。定期的にイベントを開き、異業種間の交流を推進しているほか、コミュニティマネージャーを置くことで、事業の進捗に合わせたアドバイスを提供している。

 松井氏は「コミュニティスペースといっても、ややもすると個人で仕事をして、利用者同士の交流が少なくなってしまう。コミュニティマネージャーの役割は会員同士をつなげること。31VENTURESはさまざまな業種の方に利用していただいているが、実は困っていること、悩んでいる部分は共通だったりする。その問題点は、少し視点の異なる方向からアドバイスをもらうことで、すぐに解決できたりもする。そういう気付きを発見してもらうためにもコミュニケーションを大切にしている」とコミュニティマネージャーの重要性を説いた。

東京・日本橋のコワーキングスペース「31VENTURES Clipニホンバシ」
東京・日本橋のコワーキングスペース「31VENTURES Clipニホンバシ」

実証実験に「ららぽーと」を活用、三井不動産にしかできない支援の形

 三井不動産ならではの支援として注目されるのは、実証実験の場の提供だ。三井ショッピングパーク「ららぽーと」やマンション、一戸建ての住宅を提供する三井不動産レジデンシャルをグループ会社に持つ強みをいかし、ショッピングセンターや住宅展示場などを実際に活用してサービスや技術の実証実験を進める。

 「実使用レベルのサービスであれば、ららぽーと限定などの形で試験導入してもらっている。これはベンチャーの方に言われて気づいた支援の形。お子さんを持つ家庭に強いネットワークを持つベンチャー企業と、住宅展示場を展開する三井不動産レジデンシャルをつなげて、これまでにない集客手法を検討するなど、さまざまな形でコラボレーションしている」(松井氏)と実例を挙げる。

 2017年に第6回を迎える「AEA2017」は、新たにニュージーランドとトルコが加わり、全15の国と地域からベンチャー企業が集うイベントだ。「『テクノロジーベンチャー』を対象にしており、中身はかなり骨太」(松井氏)というほど、アジア発のイノベーションを生み出すことに力を入れている。

 ノミネートは、海外の技術系ベンチャー企業をウォッチしているグローバルパートナーが担当。各国がここぞと思うベンチャーを連れてくるという。

 2日間のプログラムは、すべて英語で実施。これは「世界に通用するベンチャーを育てる」(松井氏)ことを目標にしているため。開始当初の2012年にはここまで海外のベンチャー企業を集め、英語でプレゼンするイベントはこれだけだったという。

 実証実験ができる場所まで整え、世界に通用するベンチャーを支援する。三井不動産のサポートは手厚い。一方で「10年で結果を出す」(松井氏)と、スケジュール感は明確だ。

 松井氏は「三井不動産は大規模ショッピングセンターやオフィスビルなどの開発を手掛けてきた会社なので、5~10年のスパンで事業を展開していくのは当たり前。ベンチャーの方ともそのくらいの思いで付き合っている。サービス系の事業は早めに花が開くこともあるが、技術をバックしたベンチャーはそれなりの時間がかかる。そこを辛抱強く待ちたい。ただし10年後にはしっかりとして結果を出す。そう思いながらベンチャー共創事業部は動いている」と今後について話した。

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