アマゾンの利便性を「ビジネス」でも--法人EC参入の勝算を聞く

 アマゾンジャパンは9月20日、企業向けのオフィス用品や、大学や病院向けの消耗品などを販売する法人向けECサービス「アマゾンビジネス」を開始した。ノートPCや文房具、電動工具、調理器具など2億種類以上の商品をラインアップし、請求書払いにも対応。さらに、コスト管理できる購買分析・レポート機能も備えた。

 日本では、アスクルや大塚商会など強力なライバル事業者が存在するが、後発であるアマゾンに勝算はあるのか。Amazon.com バイスプレジデンドのスティーブ・フレイザー氏と、アマゾンジャパン ディレクターの星健一氏に聞いた。


Amazon.com バイスプレジデンドのスティーブ・フレイザー氏(右)と、アマゾンジャパン ディレクターの星健一氏(左)

——このタイミングで法人向けEC事業に参入した理由を教えてください。

フレイザー氏 : 私たちは長い間、ビジネスカスタマーのニーズに答えたいと思ってきましたが、商品調達や購買の面ですべての機能がそろっているわけではありませんでした。そのため、必要とされている機能をウェブで提供するにはどうすればいいか、ビジネスカスタマーが特別な体験をするにはどうすればいいかを考えてきました。

 その結果として、まず米国で2015年4月にアマゾンビジネスをローンチしたのですが、これが大きな成功を収めました。初年度で売上高は10億ドルに達し、最近アナウンスしましたが顧客数も100万を超えています。そこで、ほかの国にもできるだけ早く展開しようということで、2016年後半には独国、2017年4月には英国でもローンチしました。いずれも滑り出しは非常に好調ですので、日本でもローンチすることとなりました。

——コンシューマー向けのイメージが強いアマゾンですが、法人事業はどのように位置付けているのでしょう。

フレイザー氏 : 最も重要なことは、アマゾンが常に顧客の声に耳を傾けているということです。我々はお客様のニーズをベースに事業を展開しています。これはビジネスでもコンシューマーでも変わりません。また、アマゾンは世界各国にすぐれた顧客ベースを持っており、価格や品揃え、利便性に対するいろいろな情報が入ってきます。アマゾンビジネスでは、これらに加えてお客様の事業自体がうまく進むように特別な機能を付け加えていくということです。

 また、アマゾンにとってビジネスカスタマーはすでに重要な存在になっています。マーケットプレイスの販売事業者だけでなく、サプライヤーやベンダーとの関係も構築しているからです。彼らにどのようなニーズがあり、どのような商品を公に出したらいいのかということを我々は理解してます。ですので、今後はビジネスカスタマーとして我々のサービスの利便性を享受していただきたいですね。

——アマゾンは日本における法人ECでは後発ですが、どのように競合他社と差別化していくのでしょう。

星氏 : 日本においてBtoBで先行している会社があるのは確かですが、我々はあくまでもお客様の利便性を考えています。他社との比較ではなくベネフィットということであれば、たとえば企業の購買担当者の要望として、サプライヤーの数を集約したい、価格を比較したいといったことがあります。その点で、アマゾンでは直販だけでなく、数十万社のマーケットプレイス事業者を抱えていますので、購買担当者はそこから簡単に価格を比較できます。

 また、企業が複数のサプライヤーから商品を買うと複数の請求書が経理に届いてしまいますが、アマゾンビジネスでは複数の事業者から購入してもまとめて支払える請求書払いに対応しています。これはお客様にとっても非常に使い勝手がいいのではないでしょうか。

——いまお話しされた「請求書払い」をはじめ、決済面にもこだわったそうですね。

星氏 : その通りです。月末締めの請求書払いというのは日本独自のニーズのため、この機能は日本のためだけに開発しました。もう1つは見積書機能です。お客様が商品購入する前に社内承認をとるために、見積書をPDFでダウンロードして印刷するプロセスが発生しますが、こちらも日本独自の慣習になりますので独自で開発をしました。

 アマゾンビジネスは、いろいろなお客様がご利用されると思っています。大手企業だけでなく個人事業主も対象にしていますので、クレジットカード払い、請求書払い、コンビニ払いなど、あらゆる支払い方法に対応したいと思っています。

——2億種類という品揃えで顧客のニーズに十分に応えられると考えますか。

星氏 : 当然ながらこれで十分だとは思っていません。現状、大学や研究所、製造業向けの商品がすべて揃っているわけではありません。今後もあらゆる業種のお客様のニーズを聞きながら、業界・業態に必要なセレクションを拡大したいと思っています。具体的には、業界を縦に切っていくイメージです。製造業で必要なもの、自動車整備工場で必要なもの、病院で必要なものはそれぞれ異なりますので、ただ商品数を増やすのではなく、それぞれの業界に必要な商品や機能を強化していきたいと思っています。また、ビジネスのお客様のみが購入できる商品も揃えていきます。たとえば、取り付け工事が必要だったり、メーカーが法人のお客様にしか販売できない商品などですね。


「アマゾンビジネス」の商品の一例

——商品配送についても教えてください。法人向けECの開始によってさらに配送量は増えますが、物流に影響はないのでしょうか。

星氏 : ビジネスのお客様に対する配送の利便性については、アマゾンがこれまで個人向けで培ってきた小口配送が生かせると思っています。これによりお客様は、大きな在庫を抱えることなく迅速かつ確実にアマゾンの配送を使いながら、ビジネス購買に生かすことができます。そのために物流はいろいろなパートナーと協力体制を築いていきたいと思っています。

——今後、アマゾンビジネスにおいて特に強めたいポイントはどこでしょうか。

フレイザー氏 : これだということは言いづらいのですが、この野心的なプログラムを通して、さまざまなことが改善されていくと思います。私はインターナショナルチームで日々テストや実験をしながら、ほぼ毎週のように新しい機能を追加しています。それぞれは小さなアップデートかもしれませんが、これによって企業のアカウントセッティングや記録管理、承認プロセスなどにかかる時間を短縮できます。日本でも約2年かけてテストをしてきましたが、今後はさらに品揃えを増やし、販売事業者を増やし、商品カテゴリを増やしていきたいと思います。

——アマゾンビジネスは、日本で受け入れられると思いますか。

フレイザー氏 : ぜひ、そうあってほしいと思います。私はアマゾンに入社して長いのですが、これまでで最もエキサイティングだったことは、日本でアマゾンビジネスを立ち上げられることです。日本に来るようになって12年以上が経ちますが、日本のオペレーションやサービスの質の高さ、品揃えの濃さなどには目を見張るものがあります。また、私の同僚たちが日本で作り上げてきたサービスのファンでもあります。いくつかのお客様とベータテストをしながら、日本のお客様がどういったニーズをお持ちなのかも理解してきたつもりです。日本で受け入れられるかはお客様次第ですが、次に起こることに非常に心を躍らせています。

星氏 : 皆さまが、なぜアマゾンを使うのかというと利便性だと思うんです。商品が何でもある、買いたい商品がすぐに探せる、そしてすぐに届く。この利便性をビジネスのお客様にも同じように感じてほしい。そこで、今回のアマゾンビジネスのローンチに合わせて、期間限定(終了時期は未定)にはなりますがお急ぎ便、日時指定便などを無料で提供します。数百万の商品が対象になりますので、まずはここで利便性を感じてほしいですね。

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