新しい「iPhone X」(「X」は「エックス」ではなく「テン」と発音する)は、Appleにとって初めてのことがたくさん詰まったスマートフォンだ。初めて5.8インチのディスプレイを採用し、ベゼルは非常に薄くなった。従来の液晶パネルとは異なる技術の有機EL(OLED)スクリーンを初めて採用している。Appleによると、この技術のおかげで、色が極めて鮮やかに表示されるという。iPhone Xは、象徴的なホームボタンを完全に排除した初めての「iPhone」でもある。Appleが初代iPhoneに搭載して、世界に浸透させたあのホームボタンだ。また、このモデルは、セキュアに本体のロックを解除したり決済したりする新しい方法として、「Face ID」を提供する初めてのiPhoneでもある。
さらに、iPhone Xは、光学手ぶれ補正を備える背面の2つの12メガピクセルカメラレンズ、前面カメラのポートレートモード(前面には2つではなく1つのレンズしか搭載されていないのだが)、そしてもっと陽気な、表情からアニメーション絵文字を作る新機能を搭載した、Appleの唯一の新デバイスである。
これらは、米CNET記者がAppleの最も新しく、最も画面の大きい、そして最も高額のiPhoneを実際に触ったときに印象に残った特徴である。われわれは、カリフォルニア州クパチーノにある、iPhone Xと同様に新しいAppleの本社「Apple Park」で、同スマートフォンに触れる機会を得た。読者の皆さんも本記事中に掲載した動画を見て、iPhone Xを自分の目で確かめていただきたい。
同じく米国時間9月12日に発表された、従来のiPhoneにより近い「iPhone 8」と「iPhone 8 Plus」では、iPhone Xの大型OLEDスクリーンや顔認識によるロック解除機能は利用できない。それはAppleの意図によるものだ。Appleが2007年に発売した初代iPhoneは当時、スマートフォンのあらゆる可能性に革命をもたらし、私たちを現在のスマートフォンへとつながる道に誘った。このiPhone Xの大胆さは、iPhone誕生10周年記念を完璧なものにするための、まさに最後の仕上げの部分なのである。
Appleは決してiPhone 8と8 Plusを見捨てているわけではない。2017年に発売されるこれら3つの新デバイスはすべて、Appleが何年も後れを取ってきた重要な機能、つまりワイヤレス充電規格のQi(「チー」と発音する)をサポートする。ワイヤレス充電は今ではサムスンの定番機能であり、同社はQiとPMAの両方の規格に対応している。AppleはQiのサポートだけに言及し、PMAには触れなかった。とはいえ、これは重要な追加機能であり、サムスンやLG、Nokia、Microsoftが過去に達成できなかった規模で、ワイヤレス充電の需要を喚起できる可能性もある。
iPhone XとiPhone 8、iPhone 8 PlusはAppleの「iOS 11」ソフトウェアを搭載する最初のスマートフォンでもある。iOS 11には、「Siri」やロック画面、通知の機能改善のほか、さまざまな細かいサプライズも含まれる。
iPhone Xをめぐる2つの大きな疑問は、非常に大胆なデザインの変更と、ホームボタンの排除に関するものだ。それによって、iPhone Xは実際に旧モデルより使いやすくなるのだろうか。そして、顔認識で本体のロックを解除する仕組みは、ユーザーに恩恵をもたらすのだろうか。それとも、それは次善策に過ぎないのだろうか。
Appleが、ホームボタンの排除をこのモデルの「特徴」として位置付けることにより、iPhoneユーザーに対して、ホームボタンに別れを告げる心構えをさせようとしているのは明白だ。しかし、徹底的なテストを実施して、それが実際にどれだけ効果的に機能するのかを確認できるまで、これは、製品を高く売りつけるための空虚な小細工なのではないか、という疑念は拭えない。実際にうまく機能するとしても、サムスンがそれをさらに進化させて、モバイル決済に使えるだけのセキュリティを備えた独自の顔認識ソフトウェアを開発するのは間違いないだろう(現在のところ、同社のモバイル決済は虹彩スキャンと指紋リーダーのみに対応している)。ほかのスマートフォンメーカーも、現在のトレンドである本体背面への指紋リーダーの搭載をやめて、顔認識によるロック解除を採用するか、少なくともそれを試す可能性は高い。
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