サムスンは船長のいない船だ、と同社幹部の1人が懸念を表明した。
サムスン電子の家電部門を率いる尹富根(ユン・ブグン)社長は、同社トップの李在鎔(イ・ジェヨン)副会長に懲役5年の判決が下ったことを憂慮していると、ベルリンで開催中の家電見本市「IFA 2017」においてドイツ紙Suddeutsche Zeitungに語った。
同紙によると、「船長がいない船は危険なので誰も乗らないだろう。われわれの船は今そのような状態だ」とユン・ブグン社長は述べたという。
ユン社長はIFA 2017のためにベルリンを訪れていた。同イベントでサムスンは、新しいウェアラブルデバイス2種とワイヤレスイヤホン、洗濯機、コードレス掃除機、その他さまざまな製品を発表した。サムスンは携帯電話が最もよく知られるが、テレビや家電などの電子製品でも大規模な事業を展開している。同氏は2012年から同事業を統括している。
IFA 2017が開幕する1週間前、韓国の裁判所はイ・ジェヨン副会長に対して、贈賄やその他の罪状により懲役5年の有罪判決を下した。49歳のイ・ジェヨン氏は、父親でサムスン会長の李健熙(イ・ゴンヒ)氏が2014年に心筋梗塞で倒れて以来、サムスンの事実上のトップとして同社を率いてきた。しかしイ・ジェヨン氏は、朴槿恵(パク・クネ)前韓国大統領が罷免されるに至った汚職事件に巻き込まれた。イ・ジェヨン氏は2月から勾留されており、サムスンはトップ不在の状態が続いている。
イ・ジェヨン副会長への実刑判決が自身に重圧をもたらしていると、ユン社長はSuddeutsche Zeitung紙に対して語った。さらにユン氏は、自身が家電事業のトップとして製品の短期的見通しを立てる一方、長期的な戦略の策定はイ・ジェヨン副会長が担っていると述べた。しかし今では、ユン社長が長期戦略も引き受けなくてはならなくなったと、同紙は報じている。
ユン社長はまた、モノのインターネット(IoT)が期待されていたほど早く普及していないと同紙に述べている。その理由として、消費者にとって明白で説得力のある使用事例が示されていないことと、プライバシーやセキュリティへの懸念があることを挙げた。それでも、サムスンは2020年までに、すべての自社製品をインターネットに接続する計画だ。
サムスンが目下、IoTへの取り組みで力を入れているのは、自社の音声アシスタントBixbyをさまざまなネット接続家電やテレビに組み込むことだ。この「スマートな助手」は2017年、「Galaxy S8」と「Galaxy S8+」向けにリリースされた。さらに、今後発売予定の「Galaxy Note8」にも搭載される予定だ。
Bixbyは、スマートフォンを制御するための新しいインターフェースとして機能しているが、家電やテレビでは異なる機能を担うことになると、ユン社長はSuddeutsche Zeitung紙に語った。例えば、インターネットに接続された冷蔵庫では、今ある食材で作れる料理のレシピをBixbyが提案してくれるようになると同紙は報じている。また、テレビでは、ユーザーがよく視聴している番組を学習し、テレビをつけると自動的にその番組を再生してくれるようになるという。
「統合はすでに本格的に進んでいる」と、ユン社長はSuddeutsche Zeitung紙に対して語った。
さらにユン社長は、有機EL(OLED)ディスプレイを自社のテレビに採用しないことにしたと同紙に述べている。その理由として、同技術を長期的に使用すると、色や焼き付きの問題が発生するからだと説明した。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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