自動運転車の開発競争は激化しているものの、人間の介在を必要としないSAE Level 5の完全な自動運転車が普及するのはまだ先だろう。それまで、ある程度は運転を自動車に任せるにしても、場合によってはハンドルやブレーキを操作するなどの介在が求められる。
つまり、常に周囲を注視している必要があるのだが、自動車のフロントガラスや屋根を支えている「Aピラー」と呼ばれる部分が邪魔で、死角になる。歩行者や自転車、対向車などがAピラーに隠されると、事故につながりかねない。
そこで、トヨタ自動車の米国子会社Toyota Motor Engineering & Manufacturing North America(TEMA)は、Aピラーを光学的に消してしまう技術を考案。この技術を米国特許商標庁(USPTO)へ出願したところ、米国時間8月10日に「APPARATUSES AND METHODS FOR MAKING AN OBJECT APPEAR TRANSPARENT」(公開特許番号「US 2017/0227781 A1」)として公開された。出願日は2016年6月17日。
この特許は、不透明な物体の周囲に鏡やハーフミラーを配置することで、本来は見えない、物体の裏側のようすを見えるようにする技術を説明したもの。例えば、自動車のAピラーに適用すれば、Aピラーに隠された領域が見えるため、Aピラーが透明になったように感じる。これならば、Aピラーの陰に入った歩行者などを見落とさずに済み、事故を未然に防げる。
視覚を遮る邪魔な物を仮想的に消す技術としては、これまでもカメラやディスプレイなどの電子機器を組み合わせる方法が考案されてきた。例えば、ジェット戦闘機「F-35 Lightning II」のパイロット向けヘルメットには、機体を“透かして”後ろや下などの状況を目視できるシステムが搭載されている。しかし、この種の技術は複雑でコストが高く、消費者向けには実用化しにくい。
それに対しTEMAの技術は、電気を使わずシンプルな仕組みで死角を解消する点が優れている。
なお、当記事ではAピラーを透明化するとして説明したが、この技術はAピラー以外にも適用可能だ。さらに、自動車以外の、目視を必要とするものに適用しても役立つだろう。
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